研究実施計画に基づき本年度は、前年度までに開発したプログラムコードをもとに、新元素合成で重要となる中性子過剰な複合核を合成するために入射核・標的核の検討を行った。また新しい反応機構として提案している「動的な殻補正エネルギーの利用による新元素合成」の可能性について詳細に調べた。 中性子過剰な複合核を合成するには、従来の重イオン融合反応とは異なった手法である、核子移行反応の可能性についても検討した。合成可能性は、理論計算の結果、大きく二つの不定なパラメータに大きく依存していることが分かった。一つは標的核と入射核が衝突した際に生じる接線方向の摩擦係数、もう一つは一体となった系の慣性モーメントの大きさである。前者は主に移行核子数に影響を与え、後者は主に放出粒子の角度分布に影響を与えることが計算により分かった。既存の実験値と比較することで、これら二つのパラメータの値を決定した。その結果を用いて、核子移行反応による新元素の生成評価が可能となるプログラムコードの整備を行った。 また、中性子過剰核の核分裂について重要となることから、超重元素領域における中性子過剰核の核分裂片質量分布について系統的な計算を行った。この結果、質量対称分裂と非対称分裂を示す原子核の領域が、一定の中性子数を境に分かれることが分かった。 このような計算は原子核の質量テーブルの精度が非常に重要である。さまざまさ質量テーブルを用いて計算結果がどのように変わるかを調べ、質量テーブル依存性についても検討を行った。 今年度は最終年であったが、超重元素合成を評価するプログラムコードの整備および計算を実行し、多角的に超重元素合成の生成可能性について議論可能となった。
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