研究課題/領域番号 |
17K05466
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 一仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (30547534)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミューオニウム / エアロゲル |
研究実績の概要 |
本年度は、一昨年度に測定したエアロゲル標的試料におけるミューオニウムの生成率、標的外真空での収率とスピン偏極に対する知見をまとめ、論文の投稿準備を進めてきた。一様磁場中でのミューオニウムとミューオンのスピン歳差運動振幅の測定(μSR)から、ミューオニウム生成率は65%程度であることが、また、入射ミューオンのスピン編極の著しい減偏極はないことが、それぞれ測定、観測された。これらの結果は、エアロゲルが高収率ミューオニウム生成・放出標的の開発に適していることを支持するとともに、生成・放出過程の定量的な理解に有益な情報である。ミューオニウム収率については、標的表面のレーザー穴加工パラメータ(穴間隔、穴径、穴深さ)との相関に対する理解を深めるとともに、複数の標的試料において開発フェーズに見合った収率を得ている。また、50時間程度の連続使用における収率の安定性も確認できた。レーザー穴加工パラメータとの相関については、標的表面での穴加工の開口率と正の相関が、穴深さと負の相関が見られた。これらの傾向はそれぞれ物質除去(ミューオニウム拡散の促進)と局所的高密度化(ミューオニウム拡散の阻害)というレーザー穴加工の相反する影響と考えており、今後の標的開発における検討事項である。PMSQゲルに顕著な炭化痕や表面破壊の理解も含めて、レーザー穴加工の詳細における更なる理解を要する。 ミューオニウムの消滅を積極的に制御することで、ミューオニウム収率をμSRから評価でき、本研究における性能評価試験の簡便化が図られる。昨年度にこの原理実証実験を行い、その知見のまとめと方法の確立も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミューオニウム収率とレーザー穴加工パラメータとの相関が予想外の傾向が見られ、放出機構の検討に時間を要した。また、一様磁場中でのミューオニウムとミューオンのスピン歳差運動の解析において想定外の磁場の変動が見られ、その詳細検討にも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
ミューオニウム収率について、標的表面のレーザー穴加工パラメータ(穴間隔、穴径、穴深さ)との相関に対して得られた知見に基づき、試料材質と穴加工の観点から、標的試料の更なる性能向上を検討する。また、一様磁場中でのミューオニウムのスピン歳差運動振幅の測定(μSR)を利用した標的試料の性能評価方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は取得したデータの解析と詳細検討が主な研究活動となり、物品費での使用が想定より少なかった。次年度では今後の標的開発の検討を主な目的とした旅費と物品費に使用する予定である。
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