液体シンチレータの作製には、溶媒に発光剤を溶かす必要があるが、直接溶けない場合は界面活性剤が広く用いられている。本研究では、まず、発光剤としてPPOを用い、これは直接水には溶けないので、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いた。発光量を増加させるためには、単純には発光剤をできるだけ多く溶解させることが考えられる。そのためには、これもまた単純に攪拌時間を長くすることが意外に有効であった。界面活性剤の量も調整し、PPOの溶解量が飽和したと思われるものに対して測定を行ったところ、有意な発光量は認められたものの、大規模実験に用いるにはまだ光量不足であった。次に、界面活性剤を変えることで溶質の溶解量を増やせるかどうかを試した。新たな界面活性剤としては、安価で用意に入手可能な石鹸(脂肪酸カリウム)を用いた。PPOの溶解量は、ドデシル硫酸ナトリウムを用いた場合と変わらなかったが、有意な発光量は検出できた。 液体シンチレータを原子炉モニターとして用いる場合、原子炉から来る反電子ニュートリノを逆ベータ崩壊反応(反電子ニュートリノが陽子と反応して、陽電子と中性子ができる反応)を捕える必要がある。そのために、液体シンチレータにガドリニウムを添加する必要があるが、ガドリニウムは、硫酸ガドリニウムとして溶解させる。本研究では、硫酸ガドリニウムは、PPOを用いた場合は溶解し発光量も変化しないが、市販の石鹸を用いた場合は溶解しないことがわかった。次にガドリニウム添加シンチレータで中性子同定ができるかどうかを試したかったが、本課題の研究期間中にはそこまでには至らなかった。
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