研究実績の概要 |
本研究の目的は, 宇宙線の大気蛍光観測におけるエネルギー決定精度を向上するための新たな大気透明度測定装置を開発することである. 平成 29 年度にはまず, 標準星と呼ばれる恒星を自動導入し, 長時間追尾するためのコンピュータ制御可能な赤道儀式架台を購入した. 追尾中の安定性を重視し, 市販されているものとしては中型の, 積載重量 8.5kg のものを選定した. コンピュータ制御用に RS232C 端子を備えており, USB・シリアル変換ケーブルで小型 PC (raspberry pi) と接続して運用する予定である. 同時に集光鏡として用いる反射望遠鏡を購入した. この装置では紫外光の強度を測定するため, ガラスレンズが紫外線をカットしてしまう可能性のある屈折式ではなく, 反射式を採用した. ある程度の口径が必要であるが, 赤道儀の積載重量も考慮し, 口径 18cm 重量 6kg のものを選定した. また, 撮像装置として紫外線に感度をもつ冷却 CCD カメラを選定し, 購入した. 制御・画像取得用に USB 端子を備えており, 赤道儀と同様に USB によって小型 PC と接続して運用する予定である. 本研究では, 無人の状態での自律運用可能な装置の開発を目的としているため, Linux 環境での恒星導入・追尾プログラムを開発する必要があるが, 赤道儀と冷却 CCD カメラはいずれも Windows による制御を前提としてソフトウェアが提供されている. 現時点では, それらのソフトウェアによって動作確認をしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
恒星導入・追尾システムの開発を進めており, 市販の赤道儀式架台と望遠鏡, 冷却 CCD カメラを購入した. 赤道儀と冷却 CCD カメラはそれぞれ小型 PC (raspberry pi) によって制御される. 平成 29 年度中に, 赤道儀による恒星の導入と追尾を行うプログラムを完成させる予定であったが, 開発が遅れている. また, 予算の都合で, 紫外線透過フィルターの購入を次年度に持ち越すこととなった.
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今後の研究の推進方策 |
まず, 購入済の赤道儀・冷却 CCD カメラによる, 恒星導入・追尾の制御システムを完成させる. 日本国内で試験観測を行い, 恒星の光度変化から大気透明度を測定する解析方法を確立する. その後, 宇宙線の大気蛍光観測が行われている米国ユタ州のテレスコープアレイ実験サイトで同様の試験観測を行う. 冷却 CCD カメラの替わりに光電子増倍管を使用する計画もあるが, 予算によっては購入を見送る.
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