研究実績の概要 |
本研究は, 宇宙線の大気蛍光観測におけるエネルギー決定精度を向上するため, 新たな大気透明度測定装置を開発することを目的とする. 連続的に変化する大気透明度を観測するために, コンピュータ制御可能な赤道儀式架台に冷却 CCD カメラを取り付けた反射望遠鏡を搭載し, 標準星と呼ばれる恒星を追尾しながら光度変化を測定する. 冷却 CCD カメラに装着する紫外線透過フィルターとして, 天体観測用の Johnson UBVRI フィルターと SHOTT 社の BG3 フィルターを購入した. これらのフィルターについては, Nd:YAG レーザーを使って紫外線透過率を測定し, 測定結果を解析中である. テレスコープアレイ実験の大気蛍光望遠鏡に装着されているフィルターも, 同じセットアップで透過率を測定している. 望遠鏡, CCD カメラ, 各種フィルターを用いて, 東京大学宇宙線研究所明野観測所での試験観測を計画していたが, 30年度には実施できず, 神奈川大学内で撮影・追尾のテストを行った. 他に, 大気蛍光観測の際に必要な降雨・風速などを測定する気象計を購入した. 気象計の購入は計画されていなかったが, 本研究の基盤となるテレスコープアレイ実験で必要であり, 予定していた光電子増倍管の購入を見送ったために本研究費で購入することとなった. また, テレスコープアレイ実験サイトにおける大気蛍光観測シフトおよび, 大気状態測定のために設置されている中央レーザーのメンテナンスのための旅費にも使用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置を構築するための機材はほぼ購入することができた. 赤道儀による恒星の導入と追尾を行うプログラムを完成させる予定であったが, 開発が遅れているため, 現時点では Windows 向けの既存のソフトウェアによって測定している. 観測データは不足しており, 今後の国内外で試験観測を重ねることが重要である. 冷却 CCD カメラの替わりに光電子増倍管の使用を計画していたが, 読み出し回路が別途必要であり, 購入費用が不足するため見送ることとした.
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今後の研究の推進方策 |
前述の明野観測所など, 国内でも大気状態が良い場所で長時間の試験観測を行い, 大気状態の時間変化が見られるようなまとまった観測データを取得する. その後, 宇宙線の大気蛍光観測が行われている米国ユタ州のテレスコープアレイ実験サイトに機材を輸送し, 同様の試験観測を行う. 試験観測と並行し, 赤道儀での恒星導入・追尾の制御システムの開発を継続する必要がある. 同じ制御ユニットを搭載する小型の赤道儀を所有しているので, 機材を米国に送った後の開発に利用する.
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