研究実績の概要 |
本研究では, 宇宙線の大気蛍光観測におけるエネルギー決定精度を向上するための, 新たな大気透明度測定装置を開発を目的とする. 大気透明度の時間変動を測定するために, コンピュータ制御可能な赤道儀式架台に冷却 CCD カメラを取り付けた反射望遠鏡を搭載し, 標準星としてスペクトルが詳細に測定されている恒星を追尾しながら, その光度変化を測定する. 大気透明度は光の波長によって異なるので, 目的とする波長の光度変化を検出するために冷却 CCD カメラには紫外線透過フィルターを装着する必要がある. 標準星の光度測定に用いられるのは Johnson UBVRI フィルターと呼ばれるものであるが, 宇宙線大気蛍光観測では SHOTT 社の BG3 フィルターが使用されており, 透過スペクトルが異なる. そこで, 大気蛍光に近い波長を持つ Nd:YAG レーザー (波長 355 nm) を使い, これら二種類のフィルターの紫外線透過率を測定した. CCDカメラについては, 神奈川大学内で一時間程度の撮影テストを行い, その間の光度変化を解析した. カメラの設定を最適化するために同様のテストを複数回行った. 2019年度に, 望遠鏡と赤道式架台を大気蛍光観測実験が行われている米国ユタ州へ輸送した. 2020年 3月に現地での試験観測を行う予定であったが, 新型コロナウイルスの流行により出張を中止せざるを得なかった. 2020年度, 2021年度は海外渡航が難しい状況が続いたため, さらに延期することとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
装置を構築するための機材はほぼ購入済で, 神奈川大学において試験観測を実施した. 望遠鏡を始めとする機材を米国ユタ州へ輸送し, 現地での試験の準備を進めている. 赤道儀式架台による遠隔操作を想定した制御プログラムを作成する予定であるが, 開発は遅れている. 冷却CCDカメラによる撮像イメージによって, 大気透明度の時間的な変化を観測できるか解析を進めている.
|