研究実績の概要 |
東大原子核科学研究センターに設置されている、低エネルギーRIビーム発生装置(CRIB)を用いて、8Liビームを生成し、本研究で目指している8Li(α,n)11B反応の測定実験を行った。本研究計画では、低エネルギー中性子を検出するための6Liガラスシンチレータを用いた中性子検出器を製作した。また、中性子検出器と合わせて、核反応で生成される高励起状態の11Bから放出される高エネルギーのγ線を検出するためのLaBr3シンチレータも併用した実験装置を製作した。装置にはHeガス標的が設置され、CRIBからの8Liビームを標的に入射して、8Li(α,n)11B反応の測定を試みた。 一連の実験により、目的とする原子核反応が起きていることを、γ線や中性子の検出を通じて確認することができた。また、実験で得られたデータを詳細に解析するとともに、解析結果をコンピュータシミュレーションと比較することで、解析結果の信頼性を高めることができた。 8Li(α,n)11B反応の反応については、実験によって得られた断面積のデータが実験グループによって大きく異なる異なる結果が発表されている。この反応は、ビッグバン元素合成や超新星爆発に伴う元素合成の過程でカギとなると考えられているため、この断面積の大きな差は、元素合成の計算に大きな不定性を与えてしまう。本研究では、この断面積の差の原因を突き止め、より信頼性の高い反応断面積を得ることを目的としていた。 今回の研究で得られた実験データは、この目的を達成するのに十分なものである。コロナ禍による研究の遅れが生じたが、確定的な結果を得るため解析結果を精査するとともに、論文投稿を準備を進めることができた。
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