研究実績の概要 |
Belleのデータを用いて B→τl, Bs→τl, B→K(*)τl, Υ→τl (l = e, μ)の解析手法についての研究を開始した。なかでも、B→τlを中心にシミュレーションを用いて研究を行った。まずは、τの崩壊モードとして、τ→eνν、τ→μνν、τ→πν といった、荷電粒子が1つだけを終状態に含むモードを用いた。この解析では、Υ(4S) から対で生成されるもう一方のB(タグ側のB)をハドロニック崩壊で再構成するため、イベント中に存在する粒子のうちタグ側のBに用いられた粒子以外は全て信号由来の粒子となる。信号側の終状態で検出可能な粒子も除外すると、他に粒子は存在しないはずなので、カロリーメータの残存エネルギー(EECL)は信号では0になる。このEECL分布を用いて信号とバックグラウンドの識別を行うのであるが、これに加えて、missing mass などの変数もニューラルネットに入れ、識別性能を向上させることを試みた。このようにして、測定の感度を見積もったところ、より多くのτの崩壊モードを用いているBaBar実験と同等の結果を得た。今後、τの崩壊モードを増やすことを試みる必要があるかもしれない。 並行して、終状態にτを含まないB→K*μeの解析も進めている。B→K(*)ll の測定で標準模型の予言と異なる結果が示唆されており、このモードはそれと関連する崩壊で比較的容易に解析を進められるという利点がある。このモードについては、シミュレーションを用いて、解析手法を確立し、データ解析の準備をしているところである。 その他、Belle II 実験の粒子識別装置(特にARICH検出器)による、τの崩壊ででてくる荷電粒子の粒子識別性能の向上についてのシミュレーション研究を開始した。
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