研究課題/領域番号 |
17K05474
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
西田 昌平 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (20370075)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レプトンフレーバーの破れ / 中間子 / 新物理 / フレーバー物理 / 粒子識別 |
研究実績の概要 |
Indian Institute of Technology Hyderabad の学生2名とともにBs→τlとΥ(2S)→τlの(l = e,μ)解析を進めている。この2つの解析ともに、シミュレーションを用いて解析方法を確立し、Belle実験グループ内部の審査を受けて、実データを解析する許可を得て、実解析を行った。この結果、Bs→τl崩壊については、有意な信号はなかったので、現在、系統誤差を評価しつつ、分岐比の上限を求めているところである。Υ(2S)→τlでは、実データを解析したところ、予期していなかったバックグラウンド成分が発見されたので、再度、解析方針を検討しているところである。また、両解析ともに系統誤算の見積を並行して行った。Bs→τlは同時生成されたもう一つのBsのセミレプトニック崩壊をタグして信号を探すが、信号側がBs→Dsπに崩壊する場合のデータとシミュレーションを比較し、セミレプトニック崩壊のタグの効率を評価した。Υ(2S)→τlでは、Υ(2S)→Υ(1S)ππをコントロールサンプルとして用いて、バックグラウンド抑制の効率の系統誤差を見積もった。その他の系統誤算の見積を並行して行い、概ね結果が得られた。今後は、フィットの系統誤差などを見積り、最終結果を得る予定である。 この他、Belleで行われているB→τlの解析の結果が出版された。Belle II 実験のARICH検出器を含む粒子識別装置については、Belle IIのデータを用いたキャリブレーションや粒子識別性能の研究を引き続き行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Belleのデータを用いた解析については、Bs→τl とΥ(2S) →τlの解析をすすめているが、コロナ感染症の影響で学生とはテレビ会議での打合せしかできず、進捗はやや遅れている。また、実験グループ内部の審査中に問題点を指摘されたことなどもあって、予定よりもやや時間がかかっているが、解析自体は着実に進捗しており、近々結果が得られる予定である。Belle IIの検出器の理解や粒子識別の研究については、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Bs→τl とΥ(2S) →τlなどBelleのデータを用いた解析については、令和4年夏までに実データを解析し、秋までに論文にまとめる予定である。その他の解析についても協力を続ける。Belle II のデータを用いた物理解析は、現時点までに十分なデータが収集されていないため、結果を得ることが困難である。予備的な研究を行うなど、可能な範囲で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況にあわせ計算機関係の整備を先送りしたほか、新型コロナウィルスの影響で、学会への参加や、学生をKEKに滞在させることなどができなかった。次年度に、計算機の購入や出張、学生のKEKへの滞在に使用予定である。
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