研究課題/領域番号 |
17K05478
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
永田 竜 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (00571209)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重力波 / 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / データ解析 / 偏光 / 系統誤差 |
研究実績の概要 |
現代初期宇宙論を主導するインフレーション理論では、量子揺らぎから生じた背景重力波の痕跡が、マイクロ波背景放射偏光の奇パリティパターンに刻印されると考えられている。日本の LiteBIRD をはじめとしてマイクロ波背景放射の偏光を精密観測する計画の検討が世界各所で推進されており、それらに期待される偏光観測データからインフレーション宇宙に由来する原始重力波を検出するための解析基盤の整備を進めた。 2017年度は疑似観測データ列生成の要となる系統誤差印加シミュレーションのソフトウェア開発を行った。走査観測時のサンプリングシミュレーションにおいて観測装置の特性を畳み込む際、近似計算によらない数値積分を実行する手法を構築した。装置特性の非一様性や銀河放射の大域的構造などを反映した疑似観測データを作成し、印加された系統誤差による偏光地図の大角度相関の汚染を実際的に評価することが可能になった。これにより、系統誤差に汚染された偏光地図の重力レンズ効果除去解析を行うための準備ができた。上記の研究遂行にあたって、シミュレーションのための計算機を導入し、ソフトウェアの開発及び運用環境の整備をおこなった。当該計算機を用いて性能テストのための計算を実行しており、次年度からのシミュレーションの運用計画を構築している。 2017年度の成果によって、走査観測シミュレーションにはじまる疑似観測データの生成から事後解析にいたるまで、本研究に必要な一連の処理を概ね実行できる体制になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の着手にあたっては、シミュレーションを一標本生成するための一連のソフトウェアの網羅が最初の成果目標であった。2017年度において疑似データ列に系統誤差を印加するソフトウェアの開発がなされたことにより、計画開始時に既に開発が完了していたツール群と併せることで、目標が予定通り達成された。開発および運用に必要な計算機環境の調達も 2017年度中に完了することができた。既にシミュレーションソフトウェアの性能計測も遂行し、次年度以降の運用計画も構築されており、計画全体として順調な進展をみている。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の CMB 研究者と連携して、シミュレーションに反映させる観測装置の特性について検討をすすめる。また、観測シミュレーションの運用による標本の取得を開始するとともに、収集した標本を統計解析するためのソフトウェア開発に注力する。2018年度中にシミュレーションデータを用いた尤度解析計算を実現することが成果目標である。シミュレーションの運用についてはソフトウェアの並列最適化も検討し、計画の加速と成果の拡大の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初期開発の作業遂行を優先した兼ね合いから、主に開発後半に利用する資料等の一部消耗品の選定・購入を次年度に持ち越すこととなった。これによる研究計画への影響は軽微である。 繰越金は、ソフトウェア開発のための資料等の購入および研究打合せの旅費で使用する予定である。
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