研究課題/領域番号 |
17K05479
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
小松原 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30242168)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | K中間子 / 崩壊 / 新粒子探索 / フレーバー物理 / ダーク |
研究実績の概要 |
本研究課題では、中性K中間子の二体崩壊 KL→π0X0 で現れる、中性で軽い新粒子X0を探索しています。 通常の物質と相互作用せず寿命も長いために測定器で検出されずに通り抜けるボーズ粒子で、かつ中性π中間子π0に近い質量(116~152MeV)を持つX0を、大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設で行っている中性K中間子実験(KOTO実験)で、KL→π0νν崩壊と並行して探索しています。KL→π0X0崩壊のシグナルは、KLのin-flight崩壊で生じるπ0で、missing energyに相当する横方向の運動量を持つのが特徴です。KOTO実験では、π0からの二つのガンマ線を前方の電磁カロリメータで測定し、電磁シャワーの位置とエネルギーから崩壊点と横方向運動量を再構成します。バックグラウンドとなるKL→π0π0崩壊は、KL崩壊からのextraなガンマ線のエネルギーが実験室系でboostされているため、崩壊領域を囲む測定器で検出し除去することが容易になります。KL→π0X0崩壊の探索は本研究でのみ行うことができ、B中間子やD中間子の実験よりも良い到達感度が得られます。それにより、“dark photons”“dark sectors”やダークマターの物理に対して、これまでの研究にはなかった観点で貢献します。 平成29年度は、KOTO実験がすでに取得している平成27-28年の物理データの解析を進めました。KL→π0νν崩壊とKL→π0X0崩壊の探索の新しい結果を、平成30年度の夏を目処に公表する予定です。 また、ハドロン実験施設で平成29年度内に実施したビーム利用運転(平成29年の5月末から6月まで、平成30年の1月から2月まで)で、物理データの収集を引き続き行いました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27-28年の物理データの解析による新しい結果を平成29年度に得る予定でしたが、解析手法の改善に時間を要しました。しかし、平成30年度の夏までに結果を得る見通しが立っていますので、本研究課題の進捗状況に本質的な遅れが生じているとは考えていません。 平成29年度のハドロン実験施設のビーム利用運転は当初、平成29年の4月から6月まで予定されていました。ところが、4月の運転開始直後に加速器のビーム取り出し機器の不具合が発生し、その復旧と調整に1ヶ月以上かかりました。そのため、夏前のビーム利用運転は5月末から6月の一ヶ月に止まりました。しかし、J-PARCでは平成30年の1月から2月までビーム利用運転を再度実施したため、年度当初に予定していた量の物理データ収集を行うことができました。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、KL→π0X0崩壊の探索の新しい結果を得て公表するとともに、6月に予定されているビーム利用運転においてKL→π0X0崩壊の物理データ収集を引き続き行い、収集したデータの解析を行います。 KOTO実験は、平成30年度に予定していた電磁カロリメータの増強(本研究とは別の科研費で準備・実施するものです。)を7月から12月にかけて行います。それにより、カロリメータ内でのシャワーの広がりを三次元的に再構成して、ガンマ線に起因する電磁シャワーと中性子に起因するハドロンシャワーの分離ができるようになります。その新しいカロリメータを用いて、KL→π0X0崩壊の探索を今後も継続します。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支出が当初予定よりも少なかったために、次年度使用額が生じました。次年度の物件費(大容量保存用テープカートリッジ)と合わせて執行することで経費を有効に活用することにしました。
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