本研究課題では、中性K中間子の二体崩壊 KL→π0X0 で現れる、中性で軽い新粒子X0を探索しています。 通常の物質と相互作用せず寿命も長いために測定器で検出されずに通り抜けるボーズ粒子で、かつ中性π中間子π0に近い質量(116-152MeV)を持つX0を、大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設で行なっている中性K中間子実験(KOTO実験)でKL→π0νν崩壊と並行して探索しています。KL→π0X0崩壊のシグナルは、KLのin-flight崩壊で生じるπ0で、missing energyに相当する横方向の運動量を持つのが特徴です。KOTO実験では、π0からの二つのガンマ線を前方の電磁カロリメータで測定し、電磁シャワーの位置とエネルギーから崩壊点と横方向運動量を再構成します。バックグラウンドとなるKL→π0π0崩壊は、KL崩壊からのextraなガンマ線のエネルギーが実験室系でboostされているため、崩壊領域を囲む測定器で検出し除去することが容易になります。KL→π0X0崩壊の探索は本研究でのみ行うことができ、B中間子やD中間子の実験よりも良い到達感度が得られます。それにより、“dark photon”“dark sectors”やダークマターの物理に対して、これまでの研究にはなかった観点で貢献します。 KOTO実験が平成27-30年度に取得した物理データの解析を進め、平成27年度のデータをもとにしたKL→π0νν崩壊とKL→π0X0崩壊の探索の結果を論文として出版しました。平成28-30年度のデータの解析は、令和元年秋の国際会議で発表しました。信号領域の中に候補となる事象が四つあり、現在の分岐比の感度ではKL→π0νν崩壊ではなくKL→π0X0崩壊の信号事象と解釈する方が自然です。現在、この四つの候補事象の詳細を確認するとともにその起源を慎重に精査しています。
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