研究課題/領域番号 |
17K05481
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
佐久間 史典 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10455347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | K中間子原子核 / πΣN崩壊 / 中性子検出 |
研究実績の概要 |
本研究はK-ppのπΣN崩壊のうち、(πΣ)0p→π+π-np崩壊から生ずる全ての粒子をCylindrical Detecotr System(CDS)で効率よく測定する事を目的とする。そのための検出器として、薄型中性子検出器や荷電粒子veto検出器の開発を行う。K-3He→(K-pp)nで生じた中性子は、Λp崩壊測定と同様に質量欠損を用いて識別する。また、既存のK-+3Heのデータより、πΣnp終状態の測定を行い、次の実験設計の指針を示すことも目的とする。
本年度は、中性子を効率よく選択する目的のため、ホドスコープの前に設置する荷電粒子vetoのR&Dを進めた。荷電粒子veto検出器として、700x100x3mm3のシンチレーターの両側に3mm角MPPCをそれぞれ5ヶ程度直列接続したプロトタイプを作成した。MPPCは、実装用の専用基板を作成し、シンチレーターと紫外線透過型テープで固定するデザインとした。今後宇宙線を用いた性能評価を行う予定である。
同時に、Λp崩壊測定を主目的としてデータ取得を行ったE15-2nd実験のデータを用いて、"K-pp"のπΣp崩壊チャンネルの解析を進めた。既存のホドスコープ(プラスティック・シンチレーター、厚み3cm)を用いたΣ->πn崩壊検出に成功し、Λ(1405)生成を捉えることに成功した。その結果、Λ(1405)pの生成断面積は"K-pp"がΛp崩壊する生成断面積に比べて10倍程度大きいことが分かった。これにより、Λ(1405)p生成と"K-pp"生成の比較が可能となる。現在さらに詳細にバックグランドを調査中であり、また、同時に投稿論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄型中性子検出器及び荷電粒子veto検出器の計本設計は完了した。また、既存のK-+3Heのデータより、Λ(1405)pn終状態を得ることにも成功し、"K-pp"束縛状態の生成メカニズム解明への新しい知見をもたらした。現在、本研究をもとにE15後継実験の設計を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた動作確認実験の解析を進める。得られた結果より、E15実験の後継実験の設計を行い、実験の提案を行う。現在我々はE15後継実験として、大型ソレノイド超電導電磁石を用いた4π検出器の設計を行っている。そこで用いる中性子検出器の基本設計として、本研究結果からのフィードバックをかける。
また、既存のデータ解析で得られたπΣp崩壊チャンネルの解析を進めて、論文としてまとめて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた検出器の開発(薄型中性子検出器)が順調に進んだため、次年度使用額が生じた。 繰り越し分は、次年度に行う測定器開発(薄型veto検出器開発の続き)や、成果発表のための旅費等に用いる計画である。
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