研究課題
本研究では、四重極変形をした原子核の励起エネルギー2.5~4MeVに現れるシザースモード共鳴と呼ばれる磁気双極子準位について、微視的な起因を明らかにするため、準単色で直線偏光をしたレーザーコンプトンガンマ線を用いてTa-181原子核の核共鳴蛍光散乱実験を行い、共鳴準位から放出されるガンマ線遷移の多重極度及び強度を決定する。核共鳴蛍光散乱ガンマ線の測定実験では、ニュースバル放射光施設において、炭酸ガスレーザーと加速エネルギー1.15GeVの電子ビームを用いて、最大エネルギー約2.3MeVのレーザーコンプトンガンマ線を生成した。直径3mmの鉛コリメーターを用いて、レーザーコンプトンガンマ線の単色化を行った。エネルギー半値幅約5%のレーザーコンプトンガンマ線を、3cmのTa-181標的に照射し、2台の高純度Ge検出器を用いて、放出ガンマ線の測定を行い、核共鳴蛍光散乱ガンマ線の実験データを取得した。また、透過型の核共鳴蛍光散乱実験では、Al標的を用いて、測定系の評価を行った。その結果、2981keVの遷移に対して、分岐の大きさとして、0.41(2)が得られ、2981keVの全崩壊幅は、119(9)meVとなり、これまでに報告されている値、116.7(25)meVと誤差の範囲内で一致することがわかった。さらに、中心エネルギー2.3、2.45、2.7、2.85、3.0MeVで、エネルギー半値幅約4%のレーザーコンプトンガンマ線を用いて行ったTa-181の核共鳴蛍光散乱実験データの解析を行った。その結果、励起エネルギー2.1から3.1MeVの46準位について、スピン及びパリティを決定した。
2: おおむね順調に進展している
レーザーコンプトンガンマ線を用いて、Ta-181原子核の核共鳴蛍光散乱実験データを取得するとともに、実験データの解析から、共鳴準位のスピン、パリティを決定した。
レーザーコンプトンガンマ線を用いた核共鳴蛍光散乱実験から得られたTa-181原子核の実験データの解析を行い、入射ガンマ線の偏光面と共鳴散乱ガンマ線の放出角との相関関係から、遷移の多重極度を求めるとともに、磁気双極子遷移の強度分布を明らかにする。
当初計画を効率的に進めた結果、運搬費や旅費を節約したため、次年度使用額が生じた。今年度、データ解析や成果発表に係る費用として使用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 951 ページ: 162998~162998
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Physical Review C
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