本研究では、四重極変形をした原子核の励起エネルギー2.5~4MeV近傍に現れるシザースモードについて、核構造的な起因を明らかにするため、Ta-181原子核の共鳴準位からの磁気双極子(M1)遷移の強度分布を決定する。Ta-181原子核に対する直線偏光ガンマ線を用いた核共鳴蛍光散乱実験データの解析から得られたスピン・パリティに関する情報と制動放射光を用いた核共鳴蛍光散乱実験から得られている遷移強度を用いて、Ta-181の励起エネルギー2.0~3.5MeV領域の全M1遷移強度をΣB(M1)=0.41(2)~0.65(3)μ_N^2と決定した。この値は、近傍の偶々核であるHf-178とHf-180から得られているΣB(M1)=2.38(9)と2.13(9)μ_N^2と比べて、5分の1程度となることがわかった。このことは、陽子数または中性子数が奇数の奇核では、偶々核と比べて全M1遷移強度が小さくなるという過去のデータと一致し、共鳴準位に強い分散が起きていると考えられる。さらに、準粒子光子模型(QPM)を用いた理論計算では、Ta-181原子核に対する励起エネルギー2.0~4.0MeVのM1遷移は、M1オペレーターの軌道成分に起因するもので、全M1遷移強度として、ΣB(M1)=1.891μ_N^2が得られている。この値は測定から得られる値と比較して、3~5倍程度である。さらに、QPMを用いた理論計算では、0.1μ_N^2以上の強度をもつM1遷移が10本予測されているが、実験ではそのような強い遷移は観測されていない。このことからも、Ta-181のような奇核では、シザースモードに起因するM1共鳴準位に対して強い分散が起き、個々の遷移強度が弱まるものと考えられる。
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