研究課題/領域番号 |
17K05485
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 健太郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00455776)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 物性理論 / スピン軌道相互作用 / トポロジカル物質 / 量子輸送現象 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
2018年度は強いスピン軌道相互作用を有する磁性体における新規量子物性として磁気輸送現象や磁化ダイナミクスの理論研究を進めた。トポロジカルに非自明なバンド構造と磁気秩序の双方を有する物質である強磁性ワイル半金属においては、通常の磁性金属と対象的に巨大な磁気抵抗効果を有することを明らかにした。特に通常の強磁性金属では磁壁を貫く電流が一様な場合とほぼ同じであり、磁気抵抗効果が極めて小さいのに対し、強磁性ワイル半金属の場合は磁壁の幅によらず大きい磁気抵抗効果が得られることを数値シミュレーションを用いて示した。磁壁などの磁気テクスチャーの運動を電気的に制御することはスピントロニクスの重要な課題であるが、強磁性ワイル半金属に対しては、磁気テクスチャーの構造が創発磁場として表されることを明らかにして、これを用いて磁壁の運動に伴う電流の解析的な表式を導出した。 強磁性ワイル半金属において電流誘起スピントルクを導出した。これはスピン軌道相互作用に起因する非断熱項でありその大きさは通常の金属に比べ一桁大きいことがわかった。電流によって駆動する磁壁の速度を見積もり今後の実験に対する指針を与えた。 トポロジカルディラック半金属は非磁性物質であるが、固有のトポロジカルなバンド構造に伴う特殊な磁気応答を理論的に発見した。通常の伝導体ではゼーマン相互作用によりスピン磁化が発生し、一方、ローレンツ力によって軌道磁化が発生する。これに対して、トポロジカルディラック半金属においてはゼーマン相互作用によって軌道磁化が、ローレンツ力によってスピン磁化が発生することを明らかにした。特にその応答係数が波数空間におけるディラック点の相対位置だけで決まるという、トポロジカルな性質があることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一部の理想化されたトポロジカル物質における磁気モーメントと電荷の結合現象を解析的に記述することに成功したため、理論解析が計画よりも早く進んだ。7本の論文を出版した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年はトポロジカル物質の近接効果による量子輸送現象の研究を進める。一つの例として非磁性物質であるトポロジカルディラック半金属に強磁性体の電極を接合した系では、バルクは非磁性であるにも関わらず異常ホール効果の実現が期待される。同様にワイル半金属に超伝導状態である電極を接合した形では表面に現れるマヨラナモードが伝導に寄与することが期待される。これらの現象を非平衡グリーン関数の方法を用いた理論を構築し、数値シミュレーションを用いて定量的に評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最終年度には論文投稿料が多くなることを予想して多めに残した。
|