トポロジカル現象は近年盛んに研究されているが、線形系において議論されているだけで、非線形系でのトポロジカル現象は未解明である。平成2021年度の成果として、様々な非線形におけるトポロジカル現象を明らかにした。非線形系の特徴的な現象はソリトン解の存在であり、トポロジカル現象との相互作用の探求は興味深い。ソリトン解を持つ典型的な非線形格子模型は戸田格子模型である。しかし、この系はトポロジカルに自明である。先ず、この模型を拡張して二量体化戸田格子模型を提唱した。この模型には自明な相とトポロジカル相が存在する。具体的な実現方法は、バリアブル・キャパシタンス・ダイオードとコイルを連結した伝送線からなる電気回路を用いる事である。伝送線の端点のみに電圧を与えた後の電圧伝搬の時間発展を追う事により、トポロジカル相とトリビアル相で顕著な違いが存在する事を発見した。次いで、戸田格子にランダムネスを導入する事により、非線形アンダーソン局在の議論をした。機械振動子系においても、二量体化サインゴードン模型を提唱し、同様の非線形トポロジカル相を実現できる事を示した。 更に、これらの知見を非線形トポロジカル光学に応用した。特に、非線形非エルミート・トポロジカル・レーザーの理論を発展させ、非線形Su-Schrieffer-Heeger模型や非線形ブリージング・カゴメ模型におけるレーザー現象を明らかにした。また、格子非線形シュレディンガー方程式が非線形トポロジカル光学において実現する事に着目し、非線形トポロジカル相をクエンチ・ダイナミクスで解析した。更に、非相反ホッピングを持つ典型的な模型である羽田野ネルソン模型に非線形シュレディンガー方程式の非線形項を導入する事で非エルミート・スキン効果と非線形シュレディンガー方程式特有のトラップ効果が同時に実現するトラップ・スキン状態を発見し、非線形トポロジカル相図を明らかにした。
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