フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィーを用いたコプレーナ型導波路の作製、小型化をさらに進めた。大きさ・形状を様々に変更した導波路の作製が迅速に行えるよう、簡易なマスクレスフォトリソグラフィー露光装置を市販のプロジェクターを改造することにより作製した。この装置を利用し、Si基板、ポリイミド・シート等の絶縁体基板上に金属蒸着・リフトオフを用いる手法、あるいは、ガラスエポキシまたはポリイミドに銅薄膜を張ったプリント基板エッチングする手法を用い、多数の小型コプレーナ型導波路を作製した。最小でスロット幅20マイクロメートル程度のものまで作製出来た。これらの導波路をピエゾステージ上に装着し、GaAs/AlGaAs2次元電子系試料やGaAsバルク試料へ近づけ、試料の伝導率を反映する、コプレーナ型導波路マイクロ波透過率の、試料との距離および面内相対位置依存性を測定した。これにより、相対位置を数マイクロメートル移動させることによる試料の伝導率の変化を捉えることが出来ることを明らかにした。 また、1次元平面超格子の周期とサイクロトロン半径との整合性に起因する熱起電力の整合性磁気抵抗振動の測定結果の解析を進め、磁場中2次元電子系に生じる温度勾配の面内方位を実験的にマッピングする手法となることを明らかにした。その定量的解釈のために、加熱部の温度の再評価が必要となった。この目的で3オメガ法と呼ばれる熱伝導率測定の手法を2次元電子系に応用した。ロックイン・アンプにて励起周波数の3倍の周波数を持つ起電力成分を測定し、電流加熱に因る2次元電子系温度の時間変化を捉え、加熱のメカニズムの再解釈を行い、加熱部の電子温度のより正確な評価を行った。
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