研究課題
本研究では、いくつかの半導体基板を用いて黒リン(BP-like)構造をもつBi(110)超薄膜を作製し、角度分解光電子分光(ARPES)と、スピン分解ARPESを用いて、電子状態を明らかにする。試料としては、(a) フラットなSi(111)√3×√3-B基板、(b) Si(111)微傾斜面に作製したSi(111)√3×√3-B基板、(c) 同微傾斜面に作製したSi(111)7×7基板、(d) 同微傾斜面に作製したSi(111)1×1-H基板、のそれぞれに、Bi(110)超薄膜を成長させて用いる。微傾斜基板としては、<-1-12>方向に1.5°オフのSi(111)を用いる。令和2年度は、(b)についてはメタほう酸(HBO2)の蒸着により作製した微傾斜基板上の√3-B構造に対してBi(110)超薄膜を成長させ、構造を評価した。Si(111)4×1-In表面にBiを蒸着すると、蒸着量、蒸着時の基板温度、蒸着後のアニール温度等の条件を変化させることで様々な表面超構造が形成されるが、それらのうちでBi:In比の異なる√3×√3構造のそれぞれの電子状態を明らかにした。さらにSi(110)基板に形成される3×2-Biおよび3×4-Bi構造について、LEEDを用いた原子構造解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
試料(b)についてはメタほう酸を用いて作製した√3-B基板上にBi(110)超薄膜を形成してLEEDによる構造評価を行った。微傾斜基板におけるテラス幅の制限により、Bi(110)のドメイン数が抑制されることを期待したが、1.5°の傾斜基板では十分狭いテラス幅ではなく、ドメイン数抑制は達成できないことがわかった。一方、基板にSi(111)4×1-In表面を用いて作製したBi-In表面合金については、Bi:In比の異なる√3×√3構造のそれぞれの電子状態を明らかにすることができた。さらにSi(110)基板を用いた3×2-Biおよび3×4-Bi構造の表面原子構造をLEEDのIV測定を用いて調べた。以上総合すると、おおむね順調に進展していると考えている。
試料(b)についてはさらに傾斜角の大きい基板に対して√3-B構造作製とBi(110)薄膜作製を試みる。Si(111)4×1-In表面を用いて作製するBi-In表面合金については、さらに作製条件を変えた場合の構造評価を行う。Si(110)3×2-Bi表面については、STM観察実験により、表面原子構造を調べる予定である。
実験に必要な高純度試料等を購入予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大による研究計画変更等に伴い年度内に間に合わなかったため、次年度に購入・使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Applied Physics Express
巻: 13 ページ: 085506~085506
10.35848/1882-0786/aba0df