研究課題
平成30年度は3次元グラフェン及びグラフェンナノ構造に関する研究を幅広く行った。越野と桐生は3次元グラフェンの量子ホール効果の理論計算を行い、曲面上に生ずる特殊な1次元カイラルチャネルとそれがもたらす量子ホール効果を明らかにした。その結果はPhys. Rev. B誌より出版された。また阪大の野村、羽部、東大化学の坂本とともに、新しい3次元炭素物質graphdiyineについての電子構造計算を行い、この物質が3次元トポロジカルノーダルライン半金属であることを初めて示し、Phys. Rev. Materials誌に発表した。また越野は阪大の黒木、MITのLiang Fuらのグループと共に、twisted bilayer grapheneのもたらす平坦バンドの電子構造を解析し、モアレ超格子上のワニエ軌道によって電子状態が記述されることを示し、Phys. Rev. X誌に発表した。この結果は近年発見されたtwisted bilayer grapheneにおける超伝導とも関連し、すでに70件以上の引用件数がある(Google Scholarによる)。また韓国SKKUの実験グループとの共同研究により、30度積層のグラフェンにおける準結晶状態を発見し、電子状態の理論計算によって実験結果を説明した。結果はScience誌で発表された。この系は、2次元物質を単純に重ねることで作られる全く新しいタイプの準結晶である。
2: おおむね順調に進展している
初年度および2年度の重要な課題であった磁場中曲面3次元電子系の電子状態・ホール効果の研究が進捗し、論文として発表された。当初の予定通り進捗している。また3次元炭素ナノ構造「graphdiyine」は当初の予想にはなかった新奇3次元物質であり、これは予想を超えた進展であった。
最終年度に向けてgraphdiyineを始めとする新たな3次元炭素ナノ物質や実験でみられる3次元ランダム多孔質グラフェンの研究を進める。後者に関しては、ランダムに接続した非周期系における磁場中の電子状態を、1次元カイラルチャネルのランダムネットワークモデルとして捉えることで、電子状態および電気伝導度を解析することを目指す。
取替を計画していたノートPCを引き続き利用したために10万円ほどの差を生じた。次年度助成金と合わせて物品購入費として使用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件)
Phys. Rev. B
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DOI:10.1103/PhysRevB.99.085443
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