研究実績の概要 |
複数の励起子の束縛状態(ポリ励起子)は,通常の谷構造のない直接型半導体では励起子2個の場合(励起子分子)しか観測されない.電子や正孔の内部自由度がスピン由来の2なので,パウリ排他律が3個以上の励起子の束縛を抑制するためである.しかし,SiGe/Si量子井戸や、窒化ボロンや遷移金属ダイカルコゲナイドの原子層物質では,2個のみならず3個あるいは4個の励起子から成るポリ励起子が実現し得る.実際,電子や正孔がスピンと谷を併せて内部自由度4を持つ.さらに,低次元性によるポリ励起子の束縛の増強を期待できる上,原子層を重ねることで電子と正孔を空間的に離れた別々の二次元面に閉じ込めることもできる.そこで内部自由度4の電子と正孔から成る二次元ポリ励起子をごく一般的に考察した.具体的には,N(=1,2,3,4) 個の電子と同数の正孔を互いに区別できる異種粒子として扱い,それらが互いにCoulomb 相互作用する系の厳密な基底状態のエネルギーを,拡散モンテカルロ法を用いて数値的に評価した.伝導帯が谷構造を持つバルクのシリコンやダイヤモンドでは,ポリ励起子由来の発光ピークが実測されているが、その特徴が二次元系でも現れる普遍的なものであることを明らかにした.さらに,電子間および電子正孔間の対布関数を計算して,それを基にポリ励起子の内部構造についても解析した. 低温強磁場下の乱れた二次元電子系(整数量子ホール系)における非対角電流ゆらぎについて数値的に考察し、局在状態がゆらぎに寄与していることを見出した.これはホール伝導度にも対角伝導度にも対角電流ゆらぎにも見られない特徴である.さらに,非対角電流ゆらぎが占有率に対してほぼ線形に増加し,占有率を推定するのに有用な量であることを示した.
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