研究課題/領域番号 |
17K05499
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小谷 岳生 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60283826)
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研究分担者 |
榊原 寛史 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (20734354)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スピンゆらぎ / QSGW法 / 2次元磁性 / ESM法 |
研究実績の概要 |
フォノンを分極関数によって取り扱う方法について、形式論を再検討した。しかし、現在書き下した形式論では、Pulay項や原子位置変化による基底関数変化項の取扱が煩雑である。この形式論を用いての数値計算を検討していたが、このままでは良い数値計算方法とするのは困難と判断し、いったん優先順位を下げた。 そして、いくらか方針を切り替え、このファノン計算の準備として進展させてきた分極関数の数値計算技術を、以下の1),2),3),4)に適用し成果を出すことを優先した。その結果5本の新規論文を報告できた。 1)有効相互作用を得る方法(model mapped RPA):モデル化した際の電子間有効相互作用を得る新規な方法であり、将来的にフォノン計算と組み合せることを想定している。 2)スピンゆらぎ計算:大阪大学のグループとともにを行った。この際、研究方針の提示やフォノンプログラムの改造などについては、私が主体的に大阪大学の博士後期課程学生に説明する形で行った。結果、QSGW法に基づくスピン揺らき計算ではDFT計算に比して実験との一致が系統的に改善されることがわかった。 3)電場をかけたQSGW法をスラブモデルに適用する計算:金沢大学のグループとの共同研究であり、我々のQSGW法のプログラムに彼らの実装したESM法を取り込む形で行った。この結果、電子相関を高度に取り入れた静的誘電率を計算が行えた。その値は実験値と非常によい一致を示した。これはフォノン計算を予定してQSGW法を高速化しておいたがゆえに可能になった計算である。 4)二次元磁性薄膜:同様に高速化の応用として米国Ames labのKe Liqin氏との共同研究を行った。QSGQ法により正しい電子状態を与えたー従来のLDA+U法では電子状態を大幅に見誤っている可能性が高いことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述のように、分極関数のみからフォノンを計算する方法は現状の形式論では困難でありスタックした状態である。ダイヤモンドのフォノン計算は可能であるが、Siではいくらか誤差が大きくなりGeでは計算できないという困難に直面している状況が改善されていない。 見通しが甘かったと言わざるを得ないが、成果を出すことを考え、フォノン計算の方向性で開発し整備した数値計算法を応用してスピンゆらぎの計算などには成功した。しかし研究計画に沿った方向に忠実に沿って成果が出ているとはいい難い状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の「フォノン計算の方向で開発した計算技術を活かした研究」を行うという研究を継続する。また、再度、形式論をやりなおしてフォノン計算とQSGW法を組み合せる比較的単純な方法を見出していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で米国物理学会への参加が不可能になったため。残り予算は学会出席および出張費として使用する。
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備考 |
2019年5月に2週間滞在し、本研究で開発した数値計算手法を応用して、Ames LabのKe Liqin氏のプロジェクトである「二次元磁性物質」についての共同研究を行った。成果は論文(Physical Review B, rapid communicaiton)に掲載決定している。
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