研究課題
本年度は、RCoO3(R=希土類)の電子構造を中心に研究し、以下のような研究実績を得た。(1) 軟X線角度分解光電子分光(SX-ARPES)測定:昨年度までに真空紫外光によるLaCoO3のARPES測定を何度か試みたが、価電子帯頂上のCo 3d t2gバンドにはバンド分散が見られなかったため、本年度はよりバルク敏感なSX-ARPES測定(540-740 eV,室温)を実施した。その結果、Co 3d t2gバンドにおいて0.5 eVを超える顕著なバンド分散を測定することに成功した。(2) 硬X線光電子分光(HAXPES)測定による電子構造研究:LaCoO3との比較物質であるPrCoO3のCo 2p内殻および価電子帯のHAXPESスペクトルを室温と低温で測定し、顕著な温度変化を示さず、室温まで低スピンであることを電子構造測定によって確認した。(3) HAXPESスペクトルの第一原理バンド計算によるシミュレーション:近年報告されているLaCoO3の価電子帯HAXPESスペクトルにおけるLa 5p状態の重要性について、光イオン化断面積も考慮した第一原理バンド計算によるシミュレーションを実施し、同様の結果を得た。また通常のバンド計算のみではHAXPESスペクトルを説明することが難しいことを、デラフォサイト型酸化物の例で明らかにした。(4) コンプトンプロファイル解析:昨年度実施した、LaCoO3との比較物質であるPrCoO3のコンプトン散乱実験で得られた、温度差分コンプトンプロファイルの解析を実施した。その結果、低温(9 K)と室温(300 K)でコンプトンプロファイルに大きな異方性を見出した。
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JPS Conference Proceedings
巻: 30 ページ: 011073-1--6
10.7566/JPSCP.30.011073
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 88 ページ: 074701-1--6
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https://www.tus.ac.jp/ridai/doc/ji/RIJIA01.php
http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/~tsaitohg/