リング共振器を用いて光のトポロジカル相を探索することが本研究の目的である。今年度は光のトポロジカル相を議論する上で常につきまとう、開放系としての性質に焦点をあて、研究した。 光は常にエネルギーが正なので、真空準位よりエネルギーが高い。このことは、フォトニック結晶のような構造で光のバンド構造ができたとしても、表面を通じてそのモードは外にもれる(外部の連続スペクトルをもった放射モードとまざる)。よって光の系は基本的に開放系といえる。その場合に、いわゆるバルクエッジ対応はどうなるのか? この問いに答えるために以前に数値的に示した光のトポロジカルエッジ状態の性質を再考した。光のもれにより、エッジ状態はその固有周波数に虚部をもつ。その虚部は状態密度において周波数領域でのローレンツ型ピークの幅として見積もることができる。バルクのギャップ中に得られる状態密度のローレンツピークを表面ブリルアンゾーンをスキャンしながらみると、ローレンツピークはギャップを周波数領域でトラバースしていき、バルクのバンド端でバルクモードの状態密度と混ざる。このピーク位置を表面ブリルアンゾーン波数の関数としてみると、エッジ状態がギャップレスになっているかがわかる。バルクがnonzero のチャーン数をもっていると、確かにエッジ状態はギャップレスになっており、バルクエッジ対応がみたされることが示された。またバレーホール系のようなチャーン数がゼロの系で近似的にドメイン壁モードがギャップレスになっている場合についても考察を深めた。
|