研究課題/領域番号 |
17K05509
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
岩野 薫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10211765)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光誘起相転移 / ドメイン励起 / 強相関系 / 多電子励起 |
研究実績の概要 |
当初の予定通り、6×6の空間格子サイズのスピンレスフェルミオンモデルを用いて、運動量依存励起スペクトルを求めるプログラム開発を行った。運動量依存スペクトルはそのまま全体を計算しても求められるが、運動量が良い量子数なので、運動量分解を行って計算した方が計算時間・必要メモリーの観点から圧倒的に効率的である。そのためには、運動量の射影演算子が必要であり、さらにそれを構築するためには、2次元の各方向(x, y 方向)へのシフト演算子が必要である。現在の状態基底はサイト局在のものを用いているので、その意味ではシフト演算子は容易にプログラム上で定義出来る。一方、それを実際に実行した場合、日立スパコン(機種:SR16000M1,、コンパイラー:日立最適化フォートラン)を用いた場合非常に時間がかかると言う問題点があった。
29年度は、この点について試行錯誤を行って改善を試みた。結論的には、インテルマシン(Xeon)、インテルフォートランと言う組み合わせがかなりの時間短縮を可能にする事が判明した。なお、プログラムは基本的には同じで、ただし、ノード内並列の方式が、前者は日立の自動並列、後者は標準的なOpenMPである。具体的には、50倍程度の高速化であったので、劇的ともいえるレベルであるが、何故このように速くなったのかはまだ不明であるものの、おそらくビット演算機構に違いがあると思われる。さらにこの改良ルーチンを用いて基底状態エネルギーの計算を成功させた。
なお、日立スパコンは事情により当機構では運用停止になったため、上記高速化の原因についてはこれ以上深入りする必要はないと判断される。従って、今後はもっぱらこのプロジェクトで購入したインテルマシンを用いて計算を進めたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「概要」でも述べたように、プログラムの一部のルーチンの実行に時間ががかかり過ぎると言う問題があったが、当初の予定通りそれを解決することが出来た。これによって今後は自前の計算機を用いての実質的な計算への道が開かれたので、進捗状況としては、「おおむね順調」と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
「概要」で述べたように、今後は自前のインテル計算機で計算を進めたい。29年度の計算で扱ったヒルベルト空間は完全なものではなく、プログラムチューニングのために最近接のフェルミオン対数にある制約(具体的には、対数が14以下という上限)を付けていた。今後はこの制約を外し、また基底状態エネルギーのみならず、スペクトル計算も可能にする。最後に、必要メモリーの見積についても触れておく。自前のインテルマシンの搭載メモリーが全体で 1TB なので、このマシンを使う限りこの制限は絶対である。格子サイズ6×6の全ヒルベルト空間上の完全な計算の場合、およそ 220GB と現在は見積もっている。運動分解をしなかった場合、日立スパコン上では1ノードではメモリー制限を超えるので8ノードを用いたが、全体で計 1.6TB のメモリーが必要だった。運動量分解のおかげで随分と少なくなったと言える。今後はこの見積の是非の確認も含めて、本プロヘクトで調達したマシンを最大限利用しつつ研究を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計算機購入において、予期していたよりも安く購入出来たため次年度使用額が発生した。この金額は、次年度において計算機周りの必要品の購入に充てたい。
|