研究課題/領域番号 |
17K05514
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤井 裕 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (40334809)
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研究分担者 |
福田 昭 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70360633)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 核磁気共鳴 / 二重磁気共鳴 / 希薄ドープ半導体 / 平面型NMRコイル / シリコン / 抵抗検出型ESR / 量子計算モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、希薄ドープ半導体におけるドナー電子とドナー原子核スピンを用いた量子計算モデル実現の基礎研究として、電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)に加えて半導体特有の光励起による電気伝導性とスピン偏極の相関を用いてスピン状態の制御や観測を目指すものである。昨年度までに、ESR励起による動的核偏極(DNP)効果を用いて、最大80%の核スピン偏極を達成した。また超低温で使用可能なミリ波帯共振器にNMR用の平面型コイルを組み込むことにより、NMRとESRの双方を一度に測定できるようにした。本年度は主に以下の成果を得た。 (1) 光励起を用いた電気抵抗測定によりESR信号を測定する抵抗検出型ESR (略してEDMR)測定について:極低温領域まで電気抵抗測定を行うために、電極付き試料を作成した。シリコン表面のエッチングについては、エッチング液の調合等、電極作成においては、電極形状、厚み、蒸着方法、アニール温度・時間などの最適化が必要で、その探索を行った。 (2) 光励起によるDNP効果を用いて核スピンを偏極させ、NMRとESRを組み合わせた測定の可能性を探索する:本研究で用いる半導体試料は低温で絶縁体となる希薄ドープであり、光励起による伝導電子の励起が必須である。各種LEDを用いて照射した光の強度による電気抵抗変化を確認するとともに、波長に依存するかなどの試験を行った。白色、赤・緑・青の単色でもほぼ変わらない結果が得られた。あわせて熱発生による電気抵抗変化を抑制するために赤外線フィルターを挿入した。しかしながら、励起伝導電子の密度は十分でなく、照射方法を見直す必要が分かった。また、現在はミリ波共振モードを乱さないように電極間距離を10mm程度にしているが、距離を極端に狭めてシリコンの電気抵抗の絶対値を小さくする必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的のひとつであった二重磁気共鳴測定はほぼ成功しているが、本研究においてもう一つの目標であったEDMR信号検出には至っていない。この要因として、予想以上に試料作成が困難であり、時間を要している。エッチング方法と金属蒸着には一定の目処が立った。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、EDMR測定に適した試料を作成することが最も肝要である。この点は1年かけてほぼクリアできたと考えており、延長期間において再度試料を作成し、測定にトライする予定である。特に電極間距離を狭めた場合に、ミリ波共振モードとの干渉を評価し、ESRを行えるように早急に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに報告した、希釈冷凍機の不具合の修理や新しい超伝導マグネットの設置があったことによる遅れに加えて、試料作成が予想以上に難しく時間を要しており、本研究課題の目的を達成するために次年度に実験を行うこととした。このため、次年度に消耗品および装置利用のための旅費ならびに実験のための寒剤代に使用する予定である。
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