研究課題
本研究は、希薄ドープ半導体におけるドナー電子とドナー原子核スピンを用いた量子計算モデル実現の基礎研究として、電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR) に加えて半導体特有の光励起による電気伝導性とスピン偏極の相関を用いてスピン状態の制御や観測を目指すものである。前年度に明らかになった、シリコンの電気抵抗の絶対値を小さくする必要性を解決するために、物質・デバイス領域共同研究拠点の共同利用を開始し、シリコンの微細加工を検討し、電極デザインを設計した。しかし、コロナ禍における研究活動制限により、実際の試料作成はできなかった。本年度は、電極作成に必要な蒸着装置の構築と、ESRおよびNMRの測定装置の改良を行った。特にNMR測定のために使用する平面型コイルを開発し、標準試料を用いたNMR測定により評価するとともに、電磁場解析シミュレーションを行うことでその特性を明らかにし、NMRの励起と検出に最適なコイル形状を探索した。研究期間全体を通じた成果としては以下が挙げられる。(1)量子計算モデルで必要とされる超低温で使用可能なミリ波帯共振器にNMR用の平面型コイルを組み込むことにより、NMRとESR の双方を一度に測定できるようにし、ESRとNMR双方によるスピン操作を可能とした。(2)ESR励起による動的核偏極(DNP)効果を用いて、80%を超える核スピン偏極を達成した。これは量子計算の初期化に必要な技術である。(3) さらなる少数スピンでの測定を目指し、光励起を用いた電気抵抗測定によりESR信号を測定する抵抗検出型ESR測定装置を開発した。光照射について波長や強度による電気抵抗変化を測定した。ミラー型共振器を用いて従来型のESR測定に加えて抵抗検出型ESR測定も同時に可能になった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
Applied Magnetic Resonance
巻: 52 ページ: 305~315
10.1007/s00723-021-01309-2
https://r-info.ad.u-fukui.ac.jp/Profiles/30/0002989/profile.html