研究課題
本研究はX線吸収分光によりボンド長と結合ポテンシャルの圧力変化を元素選択的に決定することで,Fe-Ni合金での熱膨張が抑制される機構の解明を目的とする.令和元年度は,放射光施設SPring-8で測定した実験結果の解析を推し進め,得られた成果を第一報として論文(HPR 誌に掲載:doi:10.1080/08957959.2019.1702174)にまとめた.この論文では,Fe-Niインバー合金においてFe周りの最近接原子間距離がNi周りの距離と比べて長く,しかし加圧するとその差が縮まることを明瞭なデータと共に報告した.Fe周りの柔らかな体積弾性率は負の熱膨張物質として知られるFe-Pt合金でも見られることも指摘した.また,Fe周りのデバイワラー因子はNiと比較して大きく,どちらも加圧で急激に抑制されることも報告した.またこの論文以外の仕事として,逆モンテカルロシミュレーションによるデータ解析を昨年度から継続した.その結果,3次元的なFeとNiのネットワーク構造(合金構造)の可視化を実現した.得られた合金では,通常の解析では難しいFe-Fe,Fe-Ni,Ni-Ni原子対を分離した解析に成功し,Fe-Fe原子対が他と比べて伸びていることを直接決定できた.この結果はインバー合金で指摘された大きな磁気体積効果が主にFe-Fe原子対の伸長として現れることを意味する.現在,この成果を新たな論文としてまとめている.なお令和元年度は,この課題で得られた成果を国内学会や国際会議で2件発表している.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
High Pressure Res.
巻: 40 ページ: 130-139
10.1080/08957959.2019.1702175
巻: 40 ページ: 119-129
10.1080/08957959.2019.1702174
J. Phys. Soc. Jpn.
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10.7566/JPSJ.88.114601