研究課題/領域番号 |
17K05522
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
酒井 宏典 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (80370401)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 近藤空孔 / 核磁気共鳴 / 核四重極共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、配位子サイトの非磁性元素置換によって生成した近藤空孔の微視的知見を得て、量子臨界金属における非フェルミ液体的挙動の統一的理解を目指すことである。近藤空孔とは、伝導電子とf電子との混成が切断された局所電子状態を意味し、バルク電子状態と混じらず、不均一な電子状態を形成する。昨年度に引き続き、反強磁性量子臨界点に近い強相関f電子系超伝導体CeCoIn5のIn元素を非磁性のZn元素で置換した系の115In核の核四重極共鳴(NQR)実験、核磁気共鳴(NMR)実験を行った。仕込み量でZn 7%置換したCeCoIn5の単結晶で、反強磁性秩序と超伝導が共存することを、NQR緩和率測定で微視的に明らかにし、やはり不均一電子状態が実現していることが示唆されている。反強磁性秩序がZn置換子周辺の局在磁性によって誘起される一方、超伝導性が発現した場合、超伝導近接効果によってそれらの局在磁性がマスクされる、という様相がNQR緩和率の温度依存性から議論できている。また、本系の比熱や電気抵抗測定によって見出された磁場-温度相図における多重相を明らかにするために、極低温における磁場中Co核NMR実験を進めている。NMR緩和率の磁場依存性から5Tから8 Tにかけて、常磁性相において極低温での緩和率発散は見られなかった。また、Co元素をNi元素で置換した系で量子臨界現象が見られるという報告を元に、Ni置換系のNQR実験も進めた。純CeCoIn5に比べて、1 K程度までのスピン揺らぎは抑えられていることを確認したが、さらに極低温において、緩和率が異常増大することを見出した。現在、その原因について検証を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、反強磁性と超伝導が共存する仕込み量Zn 7%置換CeCoIn5の単結晶において、不均一電子状態が実現していることを微視的に明らかにした一方、現在、磁場中のCo核NMR実験を進めて、純CeCoIn5超伝導体の異常量子臨界性について知見を得たいと考えている。また、Ni置換系の実験を新たに進めて、非磁性置換系との差違を明らかにすることで、近藤空孔生成機構について知見を得たいと考えているが、高温では臨界揺らぎがNi置換子によって抑制されていることが明らかになった一方、極低温において緩和率が異常増大していることを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
NMR緩和率の磁場依存性から5 Tから8 Tにかけて、常磁性相において極低温での緩和率発散は見られなかった。反強磁性秩序を完全に抑制できる強磁場での極低温実験を行う機会を探している。その場合には、本系での磁場-温度相図における多重相を明らかにすべく様々な磁場下での実験を行いたい。またCo元素をNi元素で置換した系で量子臨界現象が見られるという報告を元に、Ni置換系のNQR実験も進めている。本系では純CeCoIn5に比べて、1 K程度までのスピン揺らぎは抑えられていることを確認したが、さらに極低温において、緩和率が異常増大することを見出したので、その原因について検証を進める。
|