研究課題
準結晶は,特別な長距離秩序(準周期性)を持つ物質群で,正20面体対称や12回対称など,結晶とは異なる回折対称性を示す.このような構造特異性が生み出す物性を明らかにすることが目的である.前年度までの研究から,準周期性に起因する「波動関数の臨界性」と希土類原子の価数揺動が重なると面白い物性(非フェルミ液体や量子臨界状態)が現れると考えられた.このことを確かめるために,Ybを含む準結晶と関連結晶に的を絞って新物質探索を行なった.本年度は,特にYbを含むZn基合金の正20面体準結晶の探索を行なった.これは,準結晶が形成できればYbが中間価数になることが原子サイズ比(化学圧力)の観点から予想されるにもかかわらず,探索されていなかったZn系に着目したものである.正20面体クラスターを構造単位として含むZn6Yb近似結晶から出発し,Znを他金属で少量置換した3元合金をいくつか試作したところ,Zn-Au-Yb合金おいて未知の近似結晶が見られたので,対象をZn-Au-希土類合金に絞った.その結果,Zn-Au-Yb合金において新物質である正20面体準結晶(準安定相)および2/1近似結晶(安定相)を見出した.さらに,Zn-Au-Tb合金に新しい近似結晶(安定相)が形成することにも気付き,それらを論文にまとめた.この論文では,「Zn基合金に未知の準結晶や近似結晶が埋もれている」こと,さらにCd-希土類2元合金との比較から「Cd基準結晶関連相のCdをZn/Auで置換できる可能性」について述べた.最近では名大理(M研)との共同研究によって,Zn-Au-Yb準結晶のYbが中間価数(約2.5価)にあること,極低温における磁化率の温度依存性が量子臨界状態を示している事を明らかにし,物理学会で発表した.これによって,当初の目標である「準結晶に固有の物性を明らかにする」に一歩近づいたと考えられる.
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豊田研究報告
巻: 73 ページ: 41-49
Philosophical Magazine Letters
巻: 99 ページ: 351-359
10.1080/09500839.2019.1695068
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https://www.toyotariken.jp/fellow/tsutomu-ishimasa