測定技術開発を行い成功することは,シンプルに意義がある.強相関電子系として典型的な絶縁相基底状態を持つ系が,乱雑さを加えない方法で,超伝導相に転移をする場合,その背景で如何なる変化が起こっているかは,銅酸化物高温超伝導体発見以来の現代物性物理学上の中心的課題の一つである.この課題への実現可能なアプローチとして,15GPa程度の範囲で圧力誘起超伝導相探索に威力を発揮してきたキュービックアンビル型圧力装置での交流比熱測定を志向した.比熱はエントロピーを介して,ボルツマン関係式で系の状態数に直接結びついている物理量なので,圧力誘起される強相関電子系金属の物理学を議論する上で強力な測定法である.
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