研究課題
トポロジカル絶縁体はバルクの性質が絶縁体で表面のみ電気伝導性を持つものである。最近ではさらに進んで電子相関の強い系でのトポロジカル絶縁体に興味が持たれていて、SmB6はその候補の1つとして考えられている。この系における実験的研究で重要なのは表面の効果とバルクの効果を良く分離することである。一般的に、表面についての研究手段は様々なものが開発されているものの、これと対極であるバルクの効果を効果的に抽出できる測定手段は意外と限られている。そこで本研究課題では表面の効果に対し究極的に鈍感な測定量として磁歪・熱膨張などの線膨張に着目した。もしこういった測定で量子振動が観測できれば、その起源はバルクによるものと結論づけることができる。本課題ではパルス磁場中でのキャパシタンス法による磁歪測定の高感度化を実現し、この物質の測定を目指した。計測器等の最適化や数値位相検波の導入により垂直分解能の向上は実現できたが、磁場掃引に伴う誘導起電力による発熱が原因で試料の温度上昇が起こり実際の測定はうまくゆかなかった。この測定では、輸送測定等とは異なり試料空間が真空である必要性から試料の熱接触が弱くなり、磁場掃引に伴う温度変化の影響を排除しにくいという欠点が明白になった。この結果から、この測定には磁場発生時間がより長い磁石が有効であるということがわかった。昨年度、本研究で開発された数値位相検波におけるノイズ除去法の一部を国内特許として出願したが、その内容を国際特許として格上げして改めて出願した。また、これと併せて前年度国際特許を出願した方法を磁気抵抗測定法に関する論文の一部としてReview of Scientific Instruments(RSI)誌に投稿した。半金属Bi単結晶の磁歪測定の結果についても、同じくRSI誌に投稿中の東大物性研三宅厚志氏の論文において共著者としてそのデータを提供した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Nature Communications
巻: 10 ページ: 1059(1-8)
10.1038/s41467-019-08985-6