研究課題/領域番号 |
17K05535
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野村 竜司 東京工業大学, 理学院, 助教 (00323783)
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研究分担者 |
阿部 陽香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70462835)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超流動ヘリウム3 / トポロジカル超流動 / マヨラナフェルミオン / 非ユニタリー超流動 / アンドレーエフ束縛状態 |
研究実績の概要 |
MEMS (micro electromechanical systems)などの力学センサーを用い、 ナノメートルスケールの狭い空間中に閉じ込めた超流動ヘリウム3の局所応答を調べ、ナノ超流動ヘリウム3の相図を明らかにすることを目的とした。コヒーレンス長と同程度のナノ空間に超流動ヘリウム3を閉じ込めると、2次元A相、ストライプ相、ヘリカル相、ポーラー相などの新相が生じるとの理論的提案がある。秩序変数集団モードによる高周波音波の共鳴吸収やMEMSの力学応答測定から各相の対称性が決定が目的である。 超流動ヘリウム3のトポロジカルな性質により生じる表面マヨラナ状態の存在は、過去の代表らによる高周波横波インピーダンス測定により明らかにされた。また高磁場中で実現する非ユニタリー超流動ヘリウム3であるA1相、A2相において、表面束縛状態がスピン状態に依存する応答を示すことも示された。これを海外共同研究者との共同研究により、さらに推し進める。水晶振動子とMEMSの同時測定によって、幅広い周波数域での力学応答を調べることにより、スピン状態依存する力学応答の起源を明らかにすることが、共同研究の目的である。また高磁場磁場中で、振動子を超低温を保ちつつ回転させて、力学応答の磁場との角度依存性を測定することも、本共同研究の大きな特徴である。高磁場中の超流動ヘリウム3の高周波横波インピーダンス測定のセットアップを終えて、全体を組み上げ冷却実験を開始した。しかし、新型コロナの蔓延による研究制限を受けて、現在は超低温実験を中断中である。 超流動ヘリウム中での結晶成長おける非平衡効果のレヴューが、Reviews of Modern Physicsに出版された。また同様の解説を、日本結晶成長学会誌に執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに何度か超低温への冷却を行ったが、温度計の指示値では冷凍機の温度は下がっているにもかかわらず、音響応答では超流動転移の兆候が見えなかった。回転駆動用の液体ヘリウム3の熱アンカーが十分でない疑いがあり、熱アンカーを強化するよう改良した。また、高周波横波インピーダンス測定とMEMS素子測定を同時に行うと、MEMS素子に不具合が出ることも分かった。サンプルセル内でのグラウンドの取り方を工夫することにより改善させた。その後、高磁場、超低温実験を行いつつあったが、新型コロナの影響で実験は中断した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍では直ぐに実験を再開することは出来ないので、その間を利用して問題点のさらなる改善を行う。 サンプルセル内のグラウンドの改良を更に進め、水晶振動子による横波音響インピーダンス測定とMEMS測定の同時測定を行う。また超低温への冷却の問題は、回転駆動用の液体ヘリウム3への熱アンカーに改良により解決できたと思われる。新型コロナが落ち付くのを見計らい、できるだけ早く超低温高磁場中測定を再開する。高磁場中での、横波音響インピーダンス測定とMEMS測定を、非ユニタリー超流動体の表面状態の特異な力学応答を、周波数依存性と磁場方位依存性の観点から解明する。幅広い周波数域での力学応答と、超低温でのその場回転による磁場方位依存性を測定する。非ユニタリー超流体が示す特異なスピン依存力学応答の起源を明らかにし、強相関効果の発現可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国での新型コロナの蔓延により研究の一時中断を余儀なくされ、次年度使用する必要が出来た。新型コロナが落ち付けば、共同研究を早急に再開し、高磁場超低温測定に取り掛かる計画である。また、得られた実験結果は、来年度に開かれる国際会議に発表する予定であり、論文としても公表する予定である。
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