多自由度の系の構築のために,正四面体の角にs電子軌道を置いた際に現れる全ての粒子-正孔対を構成し,それらを正四面体の点群Td(結晶軸に対応した点群)の既約表現に分類した。この場合,64種類の粒子-正孔対演算子が現れるが,その内の12種類はスピン配列演算子であり,A2表現に属するAll-In-All-Outスピン配列演算子や,E表現に属するスピン配列演算子などが挙げられる。これらの粒子-正孔対を全ての単位胞について和を取れば対応する秩序パラメーター演算子が得る。これらからある秩序状態を分子場近似で記述し,そのトポロジカルな性質を調べることを目的とした。 単位胞内に正四面体を有する結晶構造としてパイロクロア構造が知られているが,この化合物の中にはAll-In-All-Outスピン配列を示すものがある。パイロクロア・ハバード模型におけるこの秩序状態での集団励起を計算した。今の場合,通常のスピン演算子の間に成り立つ交換関係と同じ交換関係が,A2表現とE表現に属するスピン配列演算子の間に成り立つことが確認された。これによりA2表現のスピン秩序相においてE表現に属するスピン配列演算子の感受率に集団励起が出現することがわかった。また,集団励起を示す振動数はスピン軌道相互作用の増大に伴って増大する結果を示したが,スピン軌道結合がスピン空間に異方性を導入するためだと結論づけられる。 また,実際のパイロクロア化合物(各サイトにおける座標軸が結晶軸とは異なる)の物性と比べるために,上記の議論を軌道自由度を持った系に拡張し,その電子軌道状態の座標軸と結晶軸との関係を明らかにした。これにより,異なった座標軸で定義されていた各サイトでの多極子演算子を結晶軸でのそれに変換できるようになったため,結晶軸で定義できる多極子配列演算子を記述することができるよう理論を拡張した。 現在、2篇の論文を執筆中である。
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