研究課題/領域番号 |
17K05544
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
荒木 新吾 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90362615)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 高圧実験 / ホール効果 / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
CeRh2Si2の2K以下のホール効果測定を,Quantum Design社製PPMSを用いたADR(断熱消磁冷凍機)による低磁場測定と低温用トランスを導入した希釈冷凍機による高磁場測定を併用して行った。約0.8 GPa以下の低圧においては2K以下のホール係数はほとんど温度依存性を示さない。一方,反強磁性臨界圧力1 GPa近傍では,低磁場のホール係数はほとんど温度依存性を示さないが,高磁場のホール係数は大きな温度依存性を示すことを明らかにした。これは臨界圧力近傍における揺らぎの発達もしくは,臨界圧力におけるフェルミ面のトポロジー変化が原因であると考えられる。高磁場中のホール係数が大きな温度依存性を示し,低磁場のホール係数がほとんど温度依存性を示さないのはCeRhIn5の結果と対照的である。現在1GPa近傍までの測定が終了しており,引き続き臨界圧力よりも高圧までの測定を進めていく予定である。 これまでのCeRh2Si2の圧力下実験(電気抵抗,a軸方向の熱膨張係数,ホール効果)の結果を整理した結果,約1GPaに2個の臨界圧力が存在していることが強く示唆されている。今後,臨界圧力を最も敏感に決定することのできる熱膨張係数のa, c軸方向の測定を行い,CeRh2Si2の反強磁性臨界圧力近傍の圧力温度相図を決定する予定である。 共同研究によりURu2Si2の希釈冷凍機温度における磁気抵抗測定を行い,常圧におけるSdH振動を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で導入した低温トランスを用いた希釈冷凍機温度のホール効果測定では,単結晶CeRh2Si2のSdH振動は検出できなかった。冷却能力が高い希釈冷凍機と高磁場超伝導磁石を組み合わせた装置を用いた共同研究を現在検討しいる。
|
今後の研究の推進方策 |
液体ヘリウムの使用可能量が不透明なため,液体ヘリウムの使用量が少ないADR(断熱消磁冷凍機)を活用した2K以下の極低温,低磁場の圧力下ホール効果測定に注力する。CeIn3, CeRhIn5などの反強磁性量子臨界点近傍における圧力下ホール効果測定を行い,臨界揺らぎの発達する様子を明らかにする。また,dHvAの結果と比較することにより,重い電子系の反強磁性量子臨界点近傍の電子状態の統一的な理解を図る。 CeRh2Si2の反強磁性量子臨界点近傍の圧力温度相図を熱膨張測定により明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費については,当該年度の液体ヘリウム代を他経費によって支払ったため,本研究費から支払う必要がなくなったためである。 旅費については国際会議への参加を取りやめたためである。 次年度使用額は液体ヘリウム代として使用する予定である。
|