熱膨張係数と電気抵抗の異方性がCeRh2Si2の転移温度の圧力依存性を決定するために有効であることが前年度までの研究で明らかになった。臨界圧力1 GPa付近で圧力を微調整しながらCeRh2Si2の電気抵抗,熱膨張測定,ホール効果の測定を行った。反強磁性転移を伴う転移点は,1.0 GPaよりも高圧において2個に分裂する。低圧側の転移点は熱膨張係数に顕著な異常が観測され1.03 GPaで臨界圧力に到達する。高圧側の転移点は電気抵抗の異方性に顕著な異常が観測され1.08 GPaで臨界圧力に到達する。電気抵抗の温度依存性から1.03-1.08 GPaにおいて大きな量子揺らぎの存在が期待され,その圧力領域において圧力誘起超伝導が観測される。
反強磁性体CeIn3の圧力下電気抵抗,ホール効果測定を行った。反強磁性量子臨界圧力は既に報告されているように2.4 GPaであった。それよりも低圧側に電気抵抗,ホール効果の異常が観測された。常圧では反強磁性転移温度よりも低温で磁気散乱が減少するために電気抵抗は単調に減少する。一方で,高圧側では反強磁性転移温度において電気抵抗の温度依存性は低圧側とは異なり,遍歴磁性的な振る舞いを示す。また,Quantum Design社製PPMSを用いたADR(断熱消磁冷凍機)によるホール効果の測定から,約1 GPa付近で最低温度付近のホール係数が不連続に変化することを明らかにした。これらの測定結果は,反強磁性量子臨界点よりも低圧の反強磁性秩序領域における局在・遍歴転移の存在を示唆するものである。
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