研究課題/領域番号 |
17K05546
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
谷田 博司 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00452615)
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研究分担者 |
西岡 孝 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (10218117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
本研究では、主に2つの目的達成を目指す。まず1つ目は、数年前に報告されたセリウム系の近藤半導体(1-2-10系)における異常な反強磁性秩序の起源の解明である。2つ目は、原子のナノ配列構造にジグザグ構造など局所反転対称性の破れを持った系に創出する奇パリティの多極子自由度が生み出す新規な異常物性を実験的に見出すことである。具体的には、上記のセリウム系近藤半導体と同じ構造を有すネオジムやテルビウム化合物をターゲットとする。現在の所属では冷媒として用いる液体ヘリウムの液化施設がないため、上記の2つの目的を達成するために、液体ヘリウムなしでも極低温下での実験が可能な環境を作ることが重要である。そこで研究の初年度は、小型のGM冷凍機を導入し、その整備にあたった。 詳しくは「現在までの進捗状況」に示すように、GM冷凍機の導入された時期が初年度の年末頃となったため、冷凍機の整備に予定よりも遅れが生じている。それに伴い、近藤半導体の異常な磁気秩序についての研究にも遅れが生じているが、現在までに配管等の整備は概ね終了した。 奇パリティ多極子自由度に関する異常物性については、現在、主に上記のネオジム系化合物について実験的な検証を進めているところである。一方、局所反転対称性の破れた系としてあらたにセリウム-コバルト-シリサイド(1-1-1系)をターゲットとして加え、圧力下での電気抵抗率および磁化率について調べ、論文として纏めた。2つの系とも、現在、共同研究を展開中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を遂行する上では、液体ヘリウムフリーな状態での極低温環境を構築することが重要である。そのため、初年度の早い段階から冷凍機の手配を始め、配管等の整備を進めていたが、年度の中頃に重要な配管部分に漏れのあることが判明した。修理も検討したが、新たな冷凍機を導入することといた。とり急ぎ仕様の打合せを進めたが、結果として年末頃にようやく納品された状況である。その後、配管の整備等を改めて開始したが、研究全体としては半年ほどの遅れが生じていると判断せざるを得ない状況であろう。 一方、研究そのものについては、概ね順調に進展,若しくは当初の計画以上の進展があると思われる。奇パリティ多極子に関して共同研究を通じて実験的な検証を試みているところである。また、新たに研究ターゲットとして加えた系については、研究の初年度から論文を発表した。また、詳細については述べないが、共同研究も早速展開し、既に予備的実験を終えたところである。いずれも次年度以降、更なる展開が期待される。 以上のように、研究自体については当初の予定を上回る展開があったが、肝心の研究環境の整備では遅れが生じているため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究そのものについては、詳細についてここでは述べることはできないが、奇パリティ多極子に由来する異常物性に関して、現在、新たな方針での実験的検証方法を共同研究者と計画中であり、その準備を進めているところである。共同研究以外でも、関連する物質群や系統的に組成を変えた系についての実験が進行中である。 また小型のGM冷凍機の整備を完成させることが重要である。要となる部分が着実に冷却されているのかどうか、温度計でモニターできるよう整備し、必要であれば熱輻射シールドを強化するなどの対策を講じる。冷却に成功したら、各種の物性測定ができるよう整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額の生じた理由は幾つかある。まず、予算を前倒し請求により多めに追加したが、業者とのやりとりによって予定よりも安価で機器を導入できたことが要因の1つである。また、旅費について、他の経費を使用したために本研究経費での支払いが生じなかった。 さらに、研究初年度に研究分担者を追加したために分担金が発生した。分担金については都合により初年度一括での配分としたが、初年度に使用されることがなかったために次年度への繰越が生じた。 次年度以降、残金は少ないので主に消耗品に充てる計画である。
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