研究実績の概要 |
今年度も前年に引き続きキラル構造を持つEuTX(T: 遷移金属,X: Si, Ge, P)やそれらに関連して,EuGe, EuGe2, EuCu5, EuAu5,EuMnBi2 などの新規物質の単結晶育成,基本物性測定,高圧実験を行い,特異な電子状態や磁気状態の探索の研究を推進した。 カイラル構造を持つEuPtSi は試料育成条件を最適化し,大型純良単結晶に成功した。それを用い,中性子散乱実験や共鳴X線散乱グループと共同研究を進めたことで,類似結晶構造を持つMnSiで報告されているスキルミオン相が存在するということがほぼ確定的になった。しかし,一方で EuPtSi のスキルミオン相(A相)は磁場を[110], [112] 方向へ加えると消失すること,スキルミオン半径が非常に小さい(18オングストローム)など,MnSi とは大きく異なることも明らかになっている。また,[001] 方向の周辺にだけ A相とは異なる別の磁気相(B相)が出現している可能性があり,国内の多くの研究者と共にさらに研究は進展している。加えて,ドハース・ファンアルフェン効果測定から,結晶構造の反転対称性の破れを反映した大きなフェルミ面の分裂を明らかにした。 正方晶反強磁性体 EuCu2Ge2 の高圧下電気抵抗測定から約7 GPa で反強磁性が消失する磁気臨界点が消失することを見出したが,さらにその臨界点付近を詳細な圧力依存,極低温まで測定したところ,1次転移的に急速に磁気転移温度が抑制され,6.5 GPa で磁気臨界点に達することが分かった。また臨界点周辺を 20 mK 程度の極低温まで測定したが,新たな相転移は観測できなかった。 他,EuGe, EuGe2, EuCu5, EuAu5 など新規の物質探索を試み,純良な単結晶育成に成功した。それぞれに奇妙な磁気相を持っていることがわかり,研究が続いている。
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