研究課題/領域番号 |
17K05550
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
赤浜 裕一 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (90202522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 固体水素 / 高圧相 / X線回折実験 / 金属化 / 超臨界相 / 放射光 / ラマン分光 / ダイヤモンドアンビル |
研究実績の概要 |
水素は、最も単純な元素で、科学研究における重要な対象物質であることから、その物性は古くから研究されている。固体水素には、最近発見された半導体相(VI相)を加え、現在、四つの相の存在が明らかにされている。低温下160GPa程で出現するIII相では水素分子の回転は完全に凍結され、分子の配向秩序が定まると考えられているがその結晶構造は不明である。多くの理論研究は、単原子水素金属相への転移に先立って、III相のバンドオーバーラップ金属化を提案しているが、提案された結晶構造と金属化圧力は収束していない。それゆえIII相の構造解明は、水素の金属化過程を解明する上での重要課題である。 本研究の目的は、超高圧下でのX線回折実験とラマン分光実験を行い、固体水素III相の結晶構造を解明することである。また、水素エネルギーの応用の見地から高密度水素の密度や分子振動の情報を系統的に理解する。さらに、高密度水素の研究で培った超高圧発生技術を物質科学研究に活用することである。 本研究では、世界最大の放射光施設SPring-8において、マイクロフォーカス単色X線ビームを用いることで固体水素III相からの比較的統計精度の高い回折パターンを200GPaまで観測することに世界で初めて成功した。III相で観測された回折線は2本で、六方晶の対称性を持つ構造(hcp)を示唆し、hcpの低対称化に伴う回折線の分裂は見られなかった。200GPaでも水素分子は依然としてhcp構造の格子点近傍にあることを明らかにした。これまで、III相の構造は理論研究から提案された単斜晶(C2/c)が有力視されてきたが、この提案を覆す結果となり、理論計算の再検討を促した。一方、水素超臨界流体相のX線回折実験とラマン分光実験を行い、密度と分子振動の相関を明らかにするとともに、単体金属インジウムの超高圧力誘起構造相転移を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体水素高圧相の結晶構造データを世界最高圧力の200GPaまで収集することに成功し、成果を論文や国際会議で発表してきた。特に、先行報告されていた理論研究の提案の間違いを指摘し、再検討を促すことができた。論文発表された再計算の結果は我々の実験結果を支持するものであり、本研究成果は国際的にも評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
固体水素高圧相の体積と圧力のデータを基に状態方程式の解析を行う。 また、超臨界流体相の密度と分子振動の実験結果を解析し、論文発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿した論文の審査が遅れ、出版料が次年度に繰り越された。
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