研究課題
水素は、科学研究における重要な対象物質で、その物性は古くから研究されてきた。固体水素には、現在、四つの相の存在が明らかにされている。低温下160GPa程で出現するIII相では水素分子の回転は完全に凍結され、分子の配向秩序が定まると考えられているがその結晶構造は不明である。多くの理論研究は、III相のバンドオーバーラップ金属化を提案しているが、提案された結晶構造と金属化圧力は収束していない。それゆえIII相の構造解明は、水素の金属化過程を解明する上での重要課題である。また、近年、水素は次世代クリーンエネルギー源として注目を集めているが、水素社会実現のためには、水素超臨界流体相の光学的性質や凝集状態そして密度等の基礎物性は応用上、大変重要である。本研究の目的は、超高圧下でのX線回折実験とラマン分光実験を行い、固体水素III相の結晶構造を解明することである。また、水素エネルギーの応用の見地から高密度水素の密度や分子振動の情報を系統的に理解する。さらに、高密度水素の研究で培った超高圧発生技術を物質科学研究に活用することである。本研究では、世界最大の放射光施設SPring-8において、固体水素III相からの比較的統計精度の高い回折パターンを200GPaまで観測することに世界で初めて成功した。III相は、200GPaでも水素分子は依然としてhcp構造の格子点近傍にあることを明らかにした。これまで、III相の構造は理論研究から提案された単斜晶(C2/c)が有力視されてきたが、この提案を覆す結果となり、理論計算の再検討を促した。本年度は、水素超臨界流体相のX線回折実験とラマン分光実験を行い、密度と分子振動の相関を解明し論文発表すると共に、本研究で独自に開発した超高圧技術を活用して、黒リン、チタン、バナジウム等の単体物質の高密度状態の構造物性を解明し論文発表した。
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