研究課題/領域番号 |
17K05551
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
石黒 亮輔 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40433312)
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研究分担者 |
高柳 英明 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 教授 (70393725)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 界面超伝導 / MoS2 / 空間反転対称性の破れ / 二次元超伝導 / 電気二重層 / イオンゲート |
研究実績の概要 |
2018年度は、2017年度の研究で判明した電極とMoS2の間の界面における超伝導状態の存在を中心に空間反転対称性の破れた2次元超伝導状態の対称性の検証を行った。本研究は、イオンゲートを用いた電界効果によって発現する原子層MoS2超伝導の超伝導対称性について、従来型超伝導体との接合を形成し、位相敏感テストによって検証することを目的に研究を始めている。本研究以前は電界効果超伝導MoS2と従来型超伝導体との超伝導接合は報告されておらず、どのように接合が形成されるか不明であったが、2017年度の研究ではこの系においてジョセフソン接合が形成できることを示した。しかしながら、接合の特徴を詳細に検討したところ、金属電極とMoS2の接合界面にこれまで報告されていない、新しい界面超伝導がある可能性があり、この界面超伝導が接合の特性に大きく寄与していることが分かったため、この検証を中心に行った。2018年度は、金属電極をAl/TiからAu/Tiに変更しても同様に超伝導状態が発現することを確かめた。また、東大物性研の共同利用を利用することにより高磁場環境での応答等も検証した。このことにより、電極MoS2界面の超伝導が、2次元超伝導であることが確かめられた。この界面超伝導はゲートによる電界誘起超伝導とは異なるが、2次元であり、ヘテロ構造を持つため面内かつ面直方向の空間反転対称性の破れた超伝導といえる。このためこの界面超伝導状態は本研究の「空間反転対称性の破れた超伝導の超伝導対称性の検証」に適しており、なおかつこのイオンゲート以外の方法で電界効果を導入し、MoS2超伝導状態を制御する方法を手に入れたといえる。これまでの実験により、この超伝導状態は従来型と異なった超伝導対称性を持つことを示唆するデータが得られており、引き続きその検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第一の理由は、当初想定していなかった金属電極とMoS2の界面における超伝導状態を発見し、この超伝導状態が二次元超伝導であることを確認できたため、イオンゲート以外で強電界を制御し二次元超伝導に導入する新たな方法を見出したことである。このことにより本研究に新たな自由度が導入できた。第二の理由としては、これらの超伝導状態がスピン三重項状態の性質をもつ実験的な示唆がえられており、超伝導対称性の検証も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初想定していたイオンゲートを用いた電界効果による強電界下の二次元超伝導の対称性の検証のみではなく、金属電極とのヘテロ接合による電界効果超伝導も対象にして研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた、試料作製のための機器利用が想定以下であったため、5,246円の残額が生じた。2019年度に行う機器利用費として使用予定である。
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