現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた物質系Sr2RuO4, CeCoIn5, (UTh)Be13に加えて新たな超伝導体UTe2が発見された。この物質は当該課題の目標を達成する上で格好の物質である。即ち理論構築の検証にとって大切な超伝導体であるので、上記超伝導体に加えてUTe2にも注力した。ギャップ構造と共に超伝導対称性を特徴づけるクーパー対のスピン対称性の決定は確立した方法がない。この物質の研究を通してその課題にも挑戦する所存である。現時点ではこの物質はp波対称のカイラル超伝導状態が実現しているものと考えられる。実際、(1)Hc2が結晶軸のすべての方向でパウリ極限を超えていること。(2)磁場、圧力、温度の作る3次元空間の中で多重相が見出されていること。(3)STM実験によって局所状態密度のスペクトルが境界線上でカイラル性を示すこと等によってカイラルp波状態が有力である。これをさらに強固なものにするために角度分解比熱実験を行った。その結果この超伝導体はa軸方向にポイントノードが存在することを明らかにした。従って対関数はp_b+ip_cの形に書けることが判明した。 当該課題の最終年度にあたり、Sr2RuO4, CeCoIn5, (UTh)Be13と新たなUTe2とを総合的に考察し、非従来型超伝導体の対関数の同定の一般論の構築に努める予定である。
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