研究課題/領域番号 |
17K05554
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中原 幹夫 近畿大学, 理工学総合研究所, 研究員 (90189019)
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研究分担者 |
高木 丈夫 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (00206723)
笠松 健一 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70413763)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超流動3He / 渦糸 / ドメイン / アナログ重力 |
研究実績の概要 |
中原と笠松は超流動3He-B相の渦芯構造に関して渦の回転軸に平行,および垂直な方向の磁場の影響を調べた.超流動3He-B相では,ノーマルコアをもつo-渦糸,A相が渦芯を占める軸対称v-渦糸,双芯型構造をもつd-渦の3種類の渦が知られている.我々は磁場が平行な場合はd-渦が,垂直な場合はv-渦が安定化することを見出した.また,磁場が垂直な場合は,磁場を強くするにつれて,d-渦からv-渦への構造転移が連続的に起こることを示した. 中原は,曲がった時空における超流体やYang-Mills場の作るアナログ重力効果を研究した(arXiv:1902.11126 ; Phys. Rev. D 投稿中).Yang-Mills場を考えた場合,3+1次元のanti-de Sitter時空から2+1次元のflat Minkowski時空が現れることを示した. 高木は超流動3He-A相における d-ソリトンが必然的にスピン流を伴うこと,これに伴いソリトンの両側のドメインは磁化が発生しなければならない事を示した.しかしながら,実験的には磁化の発生は明確には観測されず保存則が守られていない.このことは,現在未解決の問題である.現実には,Leggett-Takagi機構による磁化の緩和が起こっている可能性を考えている.また,ソリトンの構造には kink-kink型と kink-antikink型が考えられそれにより,対消滅しないものと,対消滅が可能なものが在ると予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,複雑な秩序変数を持つ量子凝縮体におけるトポロジカル励起の解析を目的とする.今年度は,グループ全体が超流動3Heにおけるトポロジカル励起(渦糸およびドメイン)の研究を行い,中原と笠松はPhysical Review Bに論文が掲載された.当初は計画されていなかったが,中原はブラックホールの周りの超流体の解析を行い,興味深い振る舞いを得た.現在この解析をSpinor BECに拡張している.
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今後の研究の推進方策 |
中原と笠松は,昨年度得られた手法を用いて,磁場の方向を渦の回転軸に対して,斜めからかけた場合の渦芯構造の安定性を調べ,双芯型渦やA相軸対称渦以外の渦構造が安定かするか否かを検討する.また境界条件における秩序変数のnベクトル周りの角度windingをもつ場合にどのような構造が現れるかを研究する.また,中原はSpinor BECを用いて実現する人工ブラックホールにおけるホーキング輻射などの現象について研究する.高木は昨年度の研究をさらに続け,結果を論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
中原は12月のワークショップ「超流動3HeおよびスピノールBECにおけるトポロジカル相・励起」にもう一名招聘する予定であったが,実現しなかったために残額が生じた.高木は年度内にワーククショップ以外で近畿大学を訪問する予定であったが,時間の都合がつかず来年度に使用することとなった.
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