研究課題
[1]「価数転移量子臨界現象」に関しては、以下の成果が得られた。1)価数転移量子臨界現象に関するレビュー論文の執筆。2)Ybを含む強相関準結晶および近似結晶Yb-Au-Alの価数転移臨界点近傍での価数の圧力変化の理論的予言。3)臨界価数ゆらぎによるグリューナイゼン係数の温度依存性を理論的に求め、磁気量子臨界ゆらぎとは異なり、発散的な振る舞いは示さないこと。4)実験家との共同研究により、CeRhIn5で観測されていた圧力下での反強磁性の1次転移的消失はCeの価数の急激な変化に起因することを示した。5)α-Yb(Al0.986Fe0.014)B4において観測されたμSR緩和率1/T1の異常な温度依存性はYbの量子臨界価数ゆらぎにより理解されることを示した(論文投稿中)。6)Ce(1-x)LaxCu5.62Au0.38 (x=0.02~0.10)の電気抵抗の異常な温度依存性(const-T^{0.75})はCeの量子臨界価数ゆらぎにより理解されることを示した(論文投稿中)。[2]「電荷近藤効果」に関しては、Pb(1-x)TlxTe (x=0.1)で125TeのNMR緩和率1/T1TのT<10Kでの発散的温度依存性を示す実験の論文の共著者としてその理論的解釈を与えた。また、その理論の枠組みを構築した(論文準備中)。[3]「電気4極子ゆらぎ」に関しては、PrV2Zn20、PrV2Al20、PrTi2Al20において観測されている超伝導転移温度が加圧下で急上昇する現象を解明する研究を、これらの物質のノーマル状態での種々の非フェルミ液体的振る舞いを説明する2チャンネルアンダーソン格子モデルにもとづいて展開した。その結果、4極子秩序状態ではスピン3重項s波奇周波数状態が、加圧により4極子秩序が消失した領域ではスピン3重項p波状態とスピン1重項d波状態が拮抗することが分かった(論文準備中)。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の交付申請書に記載した「研究実施計画」にそって研究を進め、上記「研究実績の概要」に記述したように、複数の研究計画の全てで、論文準備中のものも含めて、それぞれほぼ計画通り実施できた。
上記のように平成29年度の研究実施計画はほぼ達成できたので、今後は予定通り、平成29年度提出の交付申請書に記載した「平成30年度以降の研究実施計画」にそって研究を進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件)
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