研究課題
[1]「価数転移量子臨界現象」に関しては、1)30年度に発表した理論の論文で予言した、強相関準結晶および近似結晶Yb-A-Alの価数転移臨界点近傍での価数の圧力依存性が、観測された(論文投稿中)。2)Ce122系、Ce115系の加圧下の超伝導発現機構を臨界的価数ゆらぎ機構の観点から俯瞰するレビュー論文を実験家と共同執筆した。3)臨界価数ゆらぎによるグリューナイゼン係数の温度依存性を理論的に求め、磁気量子臨界ゆらぎとは異なり、発散的な振る舞いがないことを示した(論文投稿中)。4)臨界価数ゆらぎの輸送係数への効果は、熱起電力を顕著に減少させるという理論的結果を得た。これは長年の謎であったYbRh2Si2、CeCoIn5での実験結果を説明するとともに、βYbAlB4ではその減少が見られないという理由を与える。[2]「電荷近藤効果」に関しては、Pb(1-x)TlxTe (x=0.1)での125TeのNMR緩和率1/T1TのT<10Kでの発散的温度依存性を示す実験結果を理解する試みのなかで、ペアホッピング相互作用と軌道間クーロン斥力相互作用は互いに強め合うことが判明し、理論の整備を進めた(論文準備中)。[3]「電気4極子ゆらぎ」に関しては、1)いわゆるPr-1-2-20系のPr希薄系、Y1-xPrxIr2Zn20 (x=0.05) においてx=1の場合と同じ非フェルミ液体的温度依存性が電気抵抗など種々の物理量に現れることが報告されたが、これを理解する理論的枠組みを構築することに成功した(2018年3月の物理学会で報告し論文準備中)。2) 4f^3であるNd^3+イオンを含むNdT2Zn20(T=Co,Rh)においてPr1-2-20系と同じ非フェルミ液体的性質が報告されているが、これは基本的に4f^2であるPr^2+に対する理論を組み替えることで理解できることを示した(論文投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画申請時に記載した「研究実施計画」にそって研究を進めた。その結果、研究計画が多岐に亘ることもあって、その全てで当初の予想が達成された訳ではないが、上記「研究実績の概要」に記述したように、新しい実験研究の発展に刺激され、予想外のものも含めた新しい成果が得られた。その意味で、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
上記のように平成30年度の研究実施計画はほぼ達成できたので、今後は予定通り、本研究計画申請時に記載した「研究実施計画」に記載した「平成31年度以降の研究実施計画」にそって研究を進める。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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