研究課題
[1]「価数転移量子臨界現象」に関しては、1)常圧、低温領域で反強磁性を示す重い電子系物質EuCu2Ge2に加圧すると、反強磁性が1次転移的に消失すると同時にその圧力で残留電気抵抗が巨大なピークを示し、電気抵抗の温度依存性が温度の1次に比例することが観測されたが、これらの異常な物性は価数転移量子臨界現象として理解できることを示した(論文投稿中)。2)Ce_xLa_(1-x)Cu_(5.62)Au_(0.38) (x = 0.02-0.10)で観測された非フェルミ液体的な振舞いが、価数量子臨界現象として理解できることを示した。3)臨界価数ゆらぎによるグリューナイゼン係数の温度依存性を理論的に求め、磁気量子臨界ゆらぎとは異なり、発散的な振る舞いがないことを示した。[2]「電荷近藤効果」に関しては、Pb_(1-x)Tl_xTe (x=0.1)での^(125)TeのNMR緩和率1/T1TのT<10Kでの発散的温度依存性を示す実験結果を理解する試みのなかで、ペアホッピング相互作用と軌道間クーロン斥力相互作用は互いに強め合うことが判明し、理論の整備を進めるとともに、実験家との共著論文を出版した。[3]「電気4極子ゆらぎ」に関しては、いわゆるPr-1-2-20系のPr希薄系、Y_(1-x)Pr_xIr_2Zn_(20) (x=0.05) においてx=1の場合と同じ非フェルミ液体的温度依存性が電気抵抗など種々の物理量に現れることを理解する理論的枠組みの精緻化に努めた(arXivに掲載)。と同時に、超音波による弾性定数の温度変化の理論を作った。[4] 新しい展開として、スピン軌道相互作用と電子格子相互作用の協奏効果によりヘリカル対称性を破ったスピン3重項p波超伝導状態が実現し得ることを示した。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画申請時に記載した「研究実施計画」にそって研究を進めた。その結果、研究計画が多岐に亘ることもあって、その全てで当初の予想が達成された訳ではないが、上記「研究実績の概要」に記述したように、新しい実験研究の発展に刺激され、予想外のものも含めた新しい成果が得られた。その意味で、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
上記のように平成31年度(令和元年度)の研究実施計画はほぼ達成できたので、今後は予定通り、本研究計画申請時に記載した「研究実施計画」に記載した「平成31年度以降の研究実施計画」にそって研究を進めるとともに、成果の公表(論文出版)に努力する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 9件、 招待講演 6件)
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