| 研究課題/領域番号 |
17K05555
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| 研究機関 | 大阪大学 |
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研究代表者 |
三宅 和正 大阪大学, 理学研究科, 招へい教授 (90109265)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 原子価スキップ現象 / 電荷近藤効果 / NMR緩和率の異常 / ２チャンネルアンダーソン格子モデル / 電気４極子ゆらぎ / UTe2の多超伝導相の理論 |
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| 研究実績の概要 |
[１］「電荷近藤効果」に関して、１）AAPPS Bulletin 誌編集部の依頼に応じて、価数スキッピング現象により生じる「電荷近藤効果」関する総合報告を執筆・投稿した。 ２）前年度までの研究で、Pb(1-x)TlxTe (x=0.1)での125TeのＮＭＲ緩和率(1/T1T)のT<10Kでの発散的温度依存性を示す実験結果が、ペアホッピング相互作用と軌道間クーロン斥力相互作用の降温にともなう増大で理解できることを示した［arXiv:1806.00254 (ver2)］。同じ機構は、熱起電力を与えるゼーベック係数の温度依存性を増大させることが判った（論文準備中）。
[２]「電気４極子ゆらぎ」に関して、１）いわゆるPr-1-2-20系のPr希薄系、Y_(1-x)PrxIr2Zn20 (x=0.05) においてx=1の場合と同じ非フェルミ液体的温度依存性が電気抵抗など種々の物理量に現れるが、これを理解する理論の枠組み［J. Phys. Commun.誌に掲載］にもとづき、電気４極子転移温度の濃度（ｘ）依存性の理論を作った。（物理学会で発表し、論文準備中）２）PrPt2Cd20やPrRh2Cd20などZnの代わりにCdを含む系では、実験で普通に到達できる最低温領域では電気抵抗がフェルミ液体的振舞いを示すことが知られている。この現象は、f^2の基底結晶場はΓ3-２重項であってもZn系に比べて低い励起エネルギーをもつ非磁性１重項の影響を受けて生じることを理論的に示した。（物理学会で発表し、論文準備中）
[３] 新しい展開として、新たに発見された超伝導体UTe2に関連して以下の研究が進んだ。前年度までの成果を発展させて、超伝導転移温度がメタ磁性転移の上下で示すリエントラントの振舞いを説明できる「一般化されたGinzburg-Landau自由エネルギー」を構成した。（論文準備中）
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画申請時に記載した「研究実施計画」にそって研究を進めた。その結果、研究計画が多岐に亘ることもあって、その全てで当初の予想が達成された訳ではないが、上記「研究実績の概要」に記述したように、新しい実験研究の発展に刺激され、予想外のものも含めた新しい成果が得られた。その意味で、研究はおおむね順調に進展していると判断する。一方、令和元年末に、関連分野で計画時には予想しなかった「重い電子系物質UTe2での超伝導の発見」というインパクトある実験結果が発表されたことに触発されて、その方面の研究を行い成果が得られた。ただ、そのことで、当初の研究計画のうち後ろに廻さざるを得ない出版計画が出てきたのも事実である。しかし、コロナ禍のせいで国際会議や国内会議がリモートでの実施となったことに関連して、計画の延長が認められた令和４年度（延長最終年度）の予算の多くを令和４年度に再度繰り越すことが承認されたので、それらのやり残した論文執筆を続けることが可能となった。
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| 今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」欄に記載したように、令和３年度（当初計画時の最終年度）の予算の多くを令和４年度に再度繰り越すことが承認されたので、当初の研究計画時には予想されなかった成果の更なる発展（例えば、「スピン軌道相互作用と電子格子相互作用の協奏効果による新しいスピン３重項ｐ波超伝導状態の可能性」について秩序状態の詳細を調べること、最近注目を集めているCeRh2As2の非自明な振舞いの解明、など）を目指す。また、「研究成果の実績」欄に記載した「論文準備中」の研究成果の出版に努める。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
令和３年度はコロナ感染症の影響で、本研究計画遂行にとって不可欠な研究連絡、国際会議・国際ワークショップおよび国内会議・研究会などがリモートで行われており、研究予算はほとんど未執行のまま残った。一方、令和３年度末まで研究により新しい成果が次々に得られているが、論文の執筆・審査の過程を経て出版されるまで半年程度の期間を要するため、未発表のものが複数ある。また、論文をオープンアクセスにするためにはかなりの論文掲載料が必要となる。この状況を鑑み予算を来年度に繰越し有効活用を図りたい。
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