研究課題
(1)「電荷近藤効果」に関して、AAPPS Bulletin 誌編集部の依頼に応じて、価数スキッピング現象により生じる「電荷近藤効果」に関する総合報告を出版した。その中で、Pb_(1-x)Tl_xTe (x=0.1)で観測された^125^TeのNMR緩和率1/T1Tが示すT<10Kでの発散的温度依存性を示す実験結果を説明する理論[arXiv:1806.00254(ver2)]の結果を紹介した。(2)Uを含む新しい超伝導体として注目を集めているUTe2が磁場下で示すメタ磁性転移は体積の変化とUの価数転移を伴う。この振舞いをUの5f電子が示す遍歴・局在2重性の観点にもとづいて説明する理論を与え、実験家との共著論文として出版した。(3)スピン軌道相互作用と電子格子相互作用の協奏効果により、スピン3重項p波非ユニタリー状態が安定化することが分かり(29回低温物理国際会議LT29)で発表した。(4)Ceは4f^1^電子配置を基本とするが、重い電子物質CeRh_2As_2において4f^2電子配置をもつPr-1-2-20系のPrIr_2Zn_20などで観測されている2チャンネル近藤格子系と同様の非フェルミ液体的振舞いを示す。この実験事実は、Ceの位置の安定点が複数存在する多準位近藤効果として理解できることを提案した。また、Ceは通常4f^1^電子配置(Ce^+3^)をとるが、立方晶構造でイオン価数がCe^+3^の場合であってもそのエネルギー準位がある条件を満たすと、4f^2電子配置をもつPr-1-2-20系で出現する2チャンネル近藤格子系と同様の非フェルミ液体的振舞いを示す可能性があることを理論的に指摘した。研究期間全体を通じて、発表した英文論文は26編、和文論文は5編、国際会議等で発表した口頭発表は20件、国内会議31件であり、それなりの研究成果が得られた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
固体物理
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