研究課題/領域番号 |
17K05563
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福井 隆裕 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10322009)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 高次トポロジカル絶縁体 / エンタングルメント・チャーン数 / エンタングルメント・ベリー位相 / 指数定理 |
研究実績の概要 |
H30年度においては2つの結果を得た。 まず第1に、H29年度に行った高次トポロジカル絶縁体の研究を論文にして出版することが出来た。高次トポロジカル絶縁体はごく最近提案されて、多くの研究者を巻き込んで1つの分野へと発展しつつある。この高次トポロジカル相に対しては、通常知られているトポロジカル数は0であるため、これまでの理解だと自明な相である。実際に、通常のd次元トポロジカル絶縁体の示すd-1次元のエッジ状態や表面状態は、高次トポロジカル絶縁体には現れない。ところが、高次絶縁体にはd-2次元以下にコーナー状態が現れる。このコーナー状態の特徴付けに、我々の提案したエンタングルメント・ベリー位相が非常に有効であることを示した。 また上記に関連して、高次トポロジカル絶縁体模型の有効連続Dirac模型を提案して、指数定理を用いてコーナー状態のトポロジカルな意味付けを行った。すなわち、2次元にて、コーナー状態をなめらかにしたキンク的な2つの質量項を持つDirac模型を提案し、そのゼロモードを指数定理によって解析した。30年以上前に、Jackiw-Rebbiによって、渦糸を持つ2次元Dirac模型のゼロモードが解析されたが、申請者の解析により、コーナー状態とJackiw-Rebbi模型のゼロモードはトポロジカルには同じ状態であることが明らかになった。 第2に、それぞれが独立に興味を持たれているエッジ状態・コーナー状態・平坦バンド全てを合わせ持つ模型を提案し、そのトポロジカルな特徴を明らかにした。この模型では空間反転対称性・時間反転対称性の両者が本質的な役割を果たしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新しい研究対象である高次トポロジカル絶縁体に取り組んだため、それを理解し発展させるために想定以上に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
高次トポロジカル絶縁体を継続して研究していく。 同時に、ワイル半金属やディラック半金属に対して、特に量子異常の観点から研究を行う。これには、近年多大な興味を持たれている非エルミート系のトポロジカル現象も関係している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、計算サーバーを購入する予定だったが、新しい研究対象である高次トポロジカル絶縁体に取り組み、平成30年度には不必要となったため、次年度使用が生じた。 高次トポロジカル絶縁体の研究も軌道に乗りつつあるので、令和元年度においては大規模な計算を行うため、未使用額を当てて計算サーバーを購入する予定である。
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