研究課題/領域番号 |
17K05564
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤堂 眞治 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10291337)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計算物理 / 量子モンテカルロ / テンソルネットワーク / トポロジカル秩序 / 臨界現象 / 量子スピン系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、量子スピン系における様々な量子状態とそれら量子相の間で引き起こされる新奇な量子相転移現象の特性を明らかにすることにある。トポロジカルな秩序を特徴付ける量は、これまで主として一次元量子系を中心に研究が進められてきたが、これらを高次元に応用し、量子モンテカルロ法やテンソルネットワーク法などを用いたより精密かつ効率的な測定方法を開発する。さらにそれらを用いて大規模なシミュレーションを行い、高次元におけるトポロジカル状態の本質の解明を目指す。また、新しいアルゴリズムに基づくソフトウェアの整備・公開もまた本研究の大きな目的の一つである。 平成29年度は、長距離相互作用のあるスピン模型の臨界減衰指数に関してモンテカルロ法による解析を行った。スケーリング補正項を打ち消すユニバーサルな方法を開発し、境界領域における相転移の臨界指数の振る舞いを明らかにした。また、空間的な相関を持つランダム磁場イジング模型模型の臨界現象を調べ、有効次元がランダム磁場の相関指数に比例して変化する様子が示唆された。さらに、相関が強くなるほど系の有効次元が下部臨界次元に近づき、物理量の有限サイズ効果が顕在化だけでなく、比熱に新たなピーク構造が現れるなど、これまで予想されていなかった特異な振る舞いを明らかにした。テンソルネットワーク法の一種であるHOTRG法を非一様系に拡張し、ボンド希釈系を含む2次元イジングモデルに適用した。また、繰り込みの際に用いるisometryを、すでに計算したものを使い回すことで、計算コストを減らし、かつ通常のHOTRGとほとんど変わらない精度で計算できることを示した。さらに、SPT相を特徴づけると期待されているstrange correlatorを量子モンテカルロ法を用いて精度良く計算する手法を開発し、一次元系においてテスト計算を行い、その有効性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカルな秩序の精密解析に必要な量子モンテカルロアルゴリズムの開発と平行して、テンソルネットワークの拡張、新しいモンテカルロ更新法の開発など、手法に関する開発を進めている。また、一方で特異な臨界指数や有効次元を示す臨界現象の解析手法の開発を行い、それを用いた詳細な数値解析も平行して行っている。研究計画に上げたアルゴリズム開発・プログラム開発と公開、トポロジカル相転移、量子臨界現象、トポロジカル秩序それぞれについて、個別には多少の進捗の差があるものの、全体として順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度の研究を継続するのと平行して、二次元量子スピン系に対するエンタングルメントエントロピーの計算とトポロジカルな秩序の特徴づけに関する研究を進める。また、テンソルネットワークとモンテカルロ法のハイブリッドサンプリング手法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中に成果発表のための旅費の利用を予定していたが、平成30年度の国際学会での発表に変更を計画している
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